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2023 年度 実績報告書

魚類特有の成長調節メカニズムと指標に基づく増養殖魚診断

研究課題

研究課題/領域番号 22H02414
配分区分補助金
研究機関北海道大学

研究代表者

清水 宗敬  北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (90431337)

研究分担者 棟方 有宗  宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (10361213)
森山 俊介  北里大学, 海洋生命科学部, 教授 (50222352)
内田 勝久  宮崎大学, 農学部, 教授 (50360508)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワード成長 / ホルモン / サケ科魚類 / 組換えタンパク質 / 培養系 / ゲノム編集 / 測定系
研究実績の概要

本研究はサケ科魚類をモデルとして、成長調節に関わる数種のホルモン・タンパク質の機能を明らかにし、それらを感度と方向性が異なる指標として組み合わせて、増養殖魚の成長とストレスを高精度で診断することを目的としている。本年度は以下の成果を得た。
インスリン様成長因子(IGF)-1と-2、およびIGF結合タンパク質(IGFBP)-2aについて大腸菌発現系を用いて組換えタンパク質の作製を行った。まず融合パートナーと共に組換えサケ(rs)IGF-1と-2を発現させた。そして、rsIGF-1と-2についてはトロンビンによる酵素処理を行って融合パートナーを切断し、逆相クロマトグラフィーにより精製した。一方、rsIGFBP-2aは融合パートナーを付けた状態でアフィニティー精製した。
ゲノム編集実験については、研究協力者が所属する米国冷水養殖研究所にて、ニジマスIGFBP-2bのF2ノックアウト(KO)F2個体を作出した。IGFBP-2b KOによる血中IGF-1や他のIGFBPの補償反応を調べたところ、変異型個体と野生型個体で明瞭な違いは認められなかった。現在、研究協力者が各組織のmRNAレベルでの反応を解析中である。
融合パートナー付きのrsIGF-2を抗原として抗血清を得た。これを用いて時間分解蛍光免疫測定系の確立を試み、スタンダードカーブを得た。
また、ニジマスを対象にして育種が進んだ系統と非育種の系統の絶食に対するIGF-1/IGFBP系の反応を調べた。結果、高成長に対する選抜育種によって血中IGF-1量のベースラインの増加と血中IGFBP-1bの反応性の減少が生じていることが示唆された。
リガンドブロッティングを用いてニホンウナギ血中IGFBPの検出を行った。結果、サケ科魚類のIGFBP-1と類似した低分離量のバンドが検出され、個体によって血中量が異なることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の大きな目標として、組換えIGF-1と-2を作製して機能解析をすることがあったが、これらを達成できた。すなわち、両者とも融合パートナーを持たない組換えタンパク質として調製・精製した。これらをサクラマスの脳下垂体細胞培養系に添加したところ、IGF-2が成長ホルモン分泌を抑制した。また、発現させた融合パートナー付きの組換えIGF-2を抗原に用いて特異抗血清を作製し、TR-FIAの確立に着手した。加えて、組換えIGFBP-2bを作製し、脳下垂体培養実験に供してその作用を検証した。これらの成果は国内の学会で発表するとともに、次年度に国際学会で発表および国際誌に投稿予定である。
また、米国の研究協力者と共同でゲノム編集によりIGFBP-2b KO系統を世界に先駆けて確立することに成功し、生理学的な解析に着手した。加えて、上述の組換えIGFBP-2bを大量作製したことから、IGFBP-2b KO系統のニジマスに対する生体投与実験が可能となると考えられる。
研究協力者との共同実験で、ニホンウナギ、アユおよびシシャモの血中でIGFBPを検出し、これらの魚種でもIGFBPが成長・ストレスの指標になることを示唆した。
これらのことから、「おおむね順調に進行している」と判断した。

今後の研究の推進方策

IGF-2のTR-FIAの確立において、血清希釈系列がスタンダードカーブと並行にならない濃度範囲があることが示唆され、現在、その問題解決に取り組んでいる。具体的には、IGF-2の血清からの抽出法を酸・エタノール法から陽イオン交換体を用いた方法に変更して条件検討を行っている。また、ユーロピウム標識に用いるIGF-2を市販品から自前で調製した組換えタンパク質に変更することも検討している。
本年度までに融合パートナーを持たない組換えIGFBPを調製する方法をほぼ確立できたのでスケールアップを行う。また、より詳細なIGFBPの機能解析を行うため、脳下垂体培養系をより簡便な器官培養に切り換えることを検討中である。
さらに、海外の研究協力者と共に実施中の、IGFBP-2aゲノム編集魚の表現型解析を進める予定である。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [国際共同研究] 冷水養殖研究所(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      冷水養殖研究所
  • [国際共同研究] ベルゲン大学(ノルウェー)

    • 国名
      ノルウェー
    • 外国機関名
      ベルゲン大学
  • [国際共同研究] アイダホ大学(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      アイダホ大学
  • [国際共同研究] ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)

    • 国名
      カナダ
    • 外国機関名
      ブリティッシュ・コロンビア大学
  • [雑誌論文] Development of a time-resolved fluoroimmunoassay for salmonid insulin-like growth factor binding protein-2b2023

    • 著者名/発表者名
      Izutsu Ayaka、Habara Shiori、Kaneko Nobuto、Tadokoro Daiji、Hara Akihiko、Shimizu Munetaka
    • 雑誌名

      General and Comparative Endocrinology

      巻: 340 ページ: 114305~114305

    • DOI

      10.1016/j.ygcen.2023.114305

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Evaluation of binding capacity of circulating insulin-like growth factor binding protein-1b in salmonids using a ligand immunofunctional assay2023

    • 著者名/発表者名
      Arimoto Momoka、Izutsu Ayaka、Hara Akihiko、Shimizu Munetaka
    • 雑誌名

      Comparative Biochemistry and Physiology Part A: Molecular & Integrative Physiology

      巻: 284 ページ: 111488~111488

    • DOI

      10.1016/j.cbpa.2023.111488

    • 査読あり
  • [学会発表] サクラマスのインスリン様成長因子結合タンパク質の成長ホルモン分泌調節作用2024

    • 著者名/発表者名
      渡邊聡太、三浦拓人、磯崎泰嘉、長谷川竜也、井筒彩歌、森山俊介、清水宗敬
    • 学会等名
      令和6年度日本水産学会春季大会
  • [学会発表] ニジマスの血中インスリン様成長因子(IGF)-1とIGF結合タンパクに対する育種の効果2024

    • 著者名/発表者名
      井筒彩歌、Brian C. Small、清水宗敬
    • 学会等名
      令和6年度日本水産学会春季大会
  • [学会発表] シロサケ稚魚の水温選好性における体サイズと収容密度の影響2024

    • 著者名/発表者名
      星泰誠、荒谷綾香、加藤早織、 遠藤赳寛、棟方有宗
    • 学会等名
      令和6年度日本水産学会春季大会
  • [学会発表] Size- and photoperiod-driven parr-smolt transformation in masu salmon (Oncorhynchus masou)2023

    • 著者名/発表者名
      Yuki Ugachi, Haruka Kitade, Eisuke Takahashi, Shotaro Suzuki, Mizuki, Hayashi, Taiga Yamada, Wenda Cui, and Munetaka Shimizu
    • 学会等名
      The 11th International Workshop on Salmonid Smoltification
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] サケ科魚類の血中IGF結合タンパク-2bの測定:スモルト化に伴う変化と測定系の最適化2023

    • 著者名/発表者名
      井筒彩歌、宇賀地優希、羽原史織、清水宗敬
    • 学会等名
      第47回日本比較内分泌学会大会・シンポジウム九州大会
  • [学会発表] 宮崎県産ヤマメにおける全雌3倍体種苗の作出とその生理学的特性の評価2023

    • 著者名/発表者名
      山本翔海、桒髙由夏 、上野 賢 、宮西 弘 、内田勝久
    • 学会等名
      第47回日本比較内分泌学会およびシンポジウム九州大会
  • [備考] 研究代表者研究室ホームページ

    • URL

      https://www.fishendocrinology.com/

  • [学会・シンポジウム開催] The 11th International Workshop on Salmonid Smoltification2023

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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