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2022 年度 実績報告書

海洋の細菌群集をめぐる“見えない生物間作用”の実態とその機能:栄養塩再生への寄与

研究課題

研究課題/領域番号 22H02422
配分区分補助金
研究機関愛媛大学

研究代表者

大林 由美子  愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 助教 (60380284)

研究分担者 北村 真一  愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 准教授 (40448379)
高尾 祥丈  福井県立大学, 海洋生物資源学部, 准教授 (00511304)
吉江 直樹  愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 講師 (50374640)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワード水圏生態系 / 微生物群集 / 生物間作用 / 有機物分解 / 細胞外加水分解酵素 / 従属栄養細菌 / 菌類様原生生物 / 魚類由来溶存物質
研究実績の概要

水圏生態系での物質循環において、従属栄養細菌は有機物の分解と栄養塩類の再生に寄与するが、これらのプロセスには細菌自身の能力だけでなく、他の生物の存在も関係している可能性がある。我々は、これまでの研究成果から、海水中の従属栄養細菌が有機物を取り込む前段階に他の生物が手を貸しているかのような、有機物の低分子化を介した“見えない生物間作用”があると考えた。本研究では、海水中の細菌群集をめぐる“見えない生物間作用”の実態を示すことと、水圏生態系でのその機能、特に栄養塩再生への寄与と一次生産者への影響を評価することを目指している。
初年度は、海水中の従属栄養細菌群集をめぐる“見えない生物間作用”の検討として、主に(1)魚類と細菌群集の間の作用と(2)菌類様原生生物と細菌群集の間の作用に関する実験を行った。(1)では、魚類由来溶存物質が多く含まれるヒラメ養殖場排水中に高い有機物分解活性が含まれることと、養殖場排水を含む系では細菌群集の成長速度が大きくなる傾向があることが示された。(2)では、菌類様原生生物であるラビリンチュラ類Aurantiochytrium属の株と天然海水細菌群集を用いた実験で、ラビリンチュラ類を含む系のほうが細菌群集のみの系に比べて細菌がよく増殖することが示された。また、実験に供したAurantiochytrium属株にとっても細菌の存在はマイナスの効果にはなっていないという結果が得られた。すなわち、いずれも吸収栄養性の有機物分解者である両者が、有機物をめぐって競合するよりもお互いの能力を補填してサポートしあう関係にある可能性がある。(1)と(2)のいずれについても、今後さらなる実験・解析が必要ではあるが、興味深い結果が得られたといえる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

魚類由来溶存物質が細菌群集に与える作用に関する実験と、菌類様原生生物と細菌群集の間の作用に関する実験を行い、それぞれ興味深い結果を得ることができた。

今後の研究の推進方策

本研究では、海水中の従属栄養細菌群集をめぐる“見えない生物間作用”として、(A)菌類様原生生物による作用、(B)捕食性原生生物による作用、(C)他の生物に寄生する寄生性原生生物による作用、(D)魚類による作用、を対象としており、今後も引き続きそれぞれについて検討する培養実験を行う。(A)については、昨年度実施したAurantiochytrium属の株だけでなく、他のラビリンチュラ株を使った実験も行う。株の選択においては、細胞外加水分解酵素活性プロファイルを参考にする。また、今年度から新たに(C)に関して「魚病原因原生生物と環境中の従属栄養細菌群集の間の作用」についての実験にも着手する計画である。昨年度実施した実験も含め、細菌群集の増殖に影響を与える組み合わせについては、培養系内での栄養塩類の再生と植物プランクトン(微細藻類)の増殖への効果についても検討していく。
また、見えない生物間作用を見える化する方法の探索も並行して実施していく。そのために、見えない生物間作用の主体である水中の有機物分解酵素について、これまで詳細分析を行ってきたプロテアーゼ活性に加えて糖質分解、脂質分解等の酵素についてもその活性分析を活用できないか、検討する。加えて、分子量分画を用いた詳細分析の検討や試料保存法の検討も随時進めていく予定である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Cladoceran communities in offshore Suruga Bay, Japan: How are they formed?2023

    • 著者名/発表者名
      Kenmochi Akiyuki, Takahashi Daisuke, Matsuura Hiroyuki, Yoshikawa Takashi, Sohrin Rumi, Obayashi Yumiko, Kuroda Hiroshi, Nishikawa Jun
    • 雑誌名

      Journal of Oceanography

      巻: 79 ページ: 49-59

    • DOI

      10.1007/s10872-022-00662-5

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 栄養塩循環から高次栄養段階生態系までを取り扱う統合モデルの現状と課題2022

    • 著者名/発表者名
      吉江 直樹
    • 雑誌名

      沿岸海洋研究

      巻: 60 ページ: 41-50

    • DOI

      10.32142/engankaiyo.2022.8.002

    • 査読あり
  • [学会発表] 「波の花」から探る大気海洋境界の生物地球化学2023

    • 著者名/発表者名
      大林由美子
    • 学会等名
      寒冷圏大気-海洋間の生物地球化学的相互作用に関する研究集会
  • [学会発表] ヒラメ養殖場近海の底泥からのスクーチカ症原因繊毛虫 Miamiensis avidus の検出2023

    • 著者名/発表者名
      渡邊里帆・大林由美子・北村真一
    • 学会等名
      令和5年度日本魚病学会春季大会
  • [学会発表] 北太平洋亜熱帯域と亜寒帯域の微生物群集の生きざま:有機物と温度の効果2022

    • 著者名/発表者名
      大林由美子
    • 学会等名
      北海道大学低温科学研究所共同研究集会 亜寒帯-亜熱帯域含めた日本周辺の海洋環境科学の統合的理解
  • [学会発表] 瀬戸内海における海洋環境の変遷2022

    • 著者名/発表者名
      吉江直樹・細川琉平・徳田慎太郎・門田雅仁
    • 学会等名
      令和4年度瀬戸内海の環境保全・創造研究ワークショップ
    • 招待講演
  • [学会発表] 栄養塩から高次生態系までを取り扱う統合モデルの現状と課題2022

    • 著者名/発表者名
      吉江直樹
    • 学会等名
      第59回水環境フォーラム
    • 招待講演
  • [学会発表] Nutrient supplies into the Bungo Channel associated with Kuroshio water intrusion2022

    • 著者名/発表者名
      Yoshie N, Ogawa S, Onishi H
    • 学会等名
      Symposium “Developing International Research Cooperations for the Kuroshio and its Related Studies”
    • 国際学会
  • [学会発表] Spatio-temporal variations and supply mechanisms of nutrient in the western Seto Inland Sea, Japan2022

    • 著者名/発表者名
      Yoshie N, Ogawa S, Onishi H
    • 学会等名
      Japan Geoscience Union Meeting 2022
  • [学会発表] 両極性ラビリンチュラAmphifilidae科の原生生物の分離2022

    • 著者名/発表者名
      高尾祥丈・山本哲史・中村兼蔵・和田良太・大林由美子
    • 学会等名
      第7回ラビリンチュラシンポジウム

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公開日: 2023-12-25  

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