研究課題/領域番号 |
22H02427
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
白樫 正 近畿大学, 水産研究所, 准教授 (70565936)
|
研究分担者 |
小川 和夫 公益財団法人目黒寄生虫館, その他部局等, 名誉館長 (20092174)
服部 亘宏 近畿大学, 付置研究所, 技術職員 (40644159)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 寄生虫 |
研究実績の概要 |
本研究では、養殖場における単生虫病発生の根源となる、生簀網に蓄積する虫卵を積極的に摂食する、「虫卵駆除生物」を混合飼育することで疾病の発生を予防するという、新しい対策を確立することを目的としている。当該年度ではこれまでのアイゴ等に加え、クロメジナ稚魚についても虫卵に対する嗜好性を確認した。これにより、草食性の強い魚が虫卵除去魚類として有用であることが示された。そこで、小型試験生け簀でクロメジナもしくはアイゴをブリ類稚魚と混養させる試験を行った。1.5×1.5×3.0mの試験生け簀4面にブリ稚魚70尾を収容し、うち2面にクロメジナ稚魚200尾を混養させ、47日間飼育した。結果、メジナ混養区ではシンハダムシの寄生数が平均で約6割減少した。また、これらの生け簀では一見して網地の付着物が少なく、メジナが付着物とともに虫卵を除去したため寄生が減った事が示された。しかし、同居させたメジナが5cm程度と小さかったため、ブリによる捕食が発生し、メジナを詰まらせて死亡する事例が散発した。そこで、メジナが10cm程度に成長後再度試験した結果、メジナが入っていない生け簀ではハダムシ寄生により80%以上の死亡があったものの、混養区ではほぼ死亡がなく、顕著な生残率向上が認められた。さらに、同区ではブリ稚魚の成長も約37%高かった。同様に、アイゴとヒラマサの混養試験を実施した結果、混養によりハダムシ寄生数が約4割減少し、生残率は約4割向上した。また、メジナ、アイゴ共にハダムシ寄生は全くみられず、両種ともシンハダムシに対して優れた抵抗性を持つこともわかった。なお、両種ともにブリ類への攻撃等の問題は認められず、混養適性も高かった。これにより、虫卵除去魚類を生け簀に混養させることで、ハダムシ寄生が減り、ブリ類の成長生残を向上させる優れた効果があることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は当初の予定通り、2種の虫卵駆除候補魚類について、生け簀での飼育試験を実施し、予想以上の有効性が確認された。これにより、草食性が強いなど、虫卵駆除魚類として適した特性も明らかになった。一方で、今回はアイゴとメジナの種苗生産が不調であったため、天然稚魚を採捕して供試した。今後は安定的入手を考慮して、人工種苗でも同様の効果があるのかを確認する必要がある。また、これら2魚種ともに、シンハダムシが全く寄生しないという想像以上のハダムシ抵抗性を示したが、これについても新しい知見であるため、人工種苗との比較やそのメカニズムを解明することにより、新しい防除対策につながる可能性がある。これまでの結果は学会発表しており、論文化に必要なデータも取得できたため、概ね順調に成果が得られている。
|
今後の研究の推進方策 |
効果が認められたアイゴとクロメジナについては、引き続きブリ類との混養飼育を継続しており、より成長した魚でも同様にハダムシ寄生軽減効果を発揮するのかを調べていく。さらに、生け簀網の面積に対して最低限必要な虫卵除去魚の数についても検討を行う。加えて、虫卵だけではなく、水中を遊泳する寄生虫の幼生を濾過性二枚貝で除去するという新しい構想も得たため、これについても同時に試験を実施し、生物防除の対象を広げ、複合養殖による寄生虫症軽減についての可能性についても展開していく予定である。
|