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2023 年度 実績報告書

アコヤガイ大量死における免疫様現象の解明とそれを利用した防除法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 22H02440
配分区分補助金
研究機関国立研究開発法人水産研究・教育機構

研究代表者

松山 知正  国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(南勢), グループ長 (20372021)

研究分担者 梅田 剛佑  国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(南勢), 任期付研究員 (20792443)
松浦 雄太  国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(南勢), 研究員 (40823894)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワードアコヤガイ / 大量死 / ウイルス / Pinctada birnavirus / 免疫様現象
研究実績の概要

昨年までにアコヤガイ大量死の原因病原体を特定しPinctada birnavirus (PiBV)と命名した。また、成貝では初回感染から1か月間は再感染に対して耐性を持つことを感染試験により確認し免疫様現象の存在を確認した。本年度は大量死が問題となる稚貝における免疫現象の有無、免疫様現象のメカニズムを理解するための研究を実施した。
稚貝に対してPiBVが感染するが死亡しない条件である水温20℃で感染試験を実施し、4週間後に大量死が発生する水温25℃に昇温させ、再感染試験を行った。20℃で感染を経験した群の死亡率は25℃で初めて感染する群と比較して有意に低く、稚貝においても免疫様現象の存在が確認された。感染歴のある個体の血球を移植しても、非感染個体に耐性をもたらすことはできなかった。よって、脊椎動物の免疫とは異なり、血球は免疫様現象を担わないと考えられる。プレート中で培養したアコヤガイの外套膜片に対してPiBVを感染させたところ、個体に対する感染試験の4週間後に採材した外套膜片では、感染歴のない個体の外套膜片と比較してPiBVの増殖が有意に低かった。よって、本病における免疫様現象は感染組織である外套膜で行われると考えられた。外套膜片にPiBVあるいはGFP配列に対応する二本鎖RNA、あるいはpolyICを作用させたところ、いずれにおいてもPiBVの増殖が有意に抑制された。昨年の研究で、中腸線に感染する本病とは無関係なマリンビルナウイルスを感染した個体では、PiBVに対して免疫様現象が起こらないことを確認している。PiBVを含むビルナウイルスは二本鎖RNAウイルスであり、本免疫様現象は二本鎖RNAによる非特異的かつ組織局所的な防御反応なのかもしれない。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

計画通りに免疫様現象の存在を感染試験で示すことができた。また、本現象はPinctada birnavirus (PiBV)の感染組織である外套膜そのものにおいて機能することを確認できた。さらに、本現象を誘導する物質はPiBVの二本鎖RNAゲノムであり、配列に対する特異性は無い可能性を示唆する結果を得ることができ、この点は計画よりも進捗している。一方で、計画していた発現解析やエピゲノム解析は実施できていない。次年度にこれらの解析を行う予定である。全体として概ね順調に進展とした。

今後の研究の推進方策

感染試験病貝および健常貝に対して経時的に感染試験を実施し、免疫様現象の持続期間を調査する。また、再感染時あるいはdsRNA刺激後の外套膜を対象に、トランスクリプトーム解析を実施し、免疫様現象のメカニズムを探る。さらに、アワビにおいても同様の現象が起こりうるのかAbalone asfa-like virusをモデルとして検証する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] A novel birnavirus identified as the causative agent of summer atrophy of pearl oyster (Pinctada fucata (Gould))2024

    • 著者名/発表者名
      松山知正・米加田徹・三輪理・桐生郁也・栗山功・板野公一・川上秀昌
    • 雑誌名

      PeerJ

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.7717/peerj.17321

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Pathogenicity, genomic analysis and structure of abalone asfa-like virus: evidence for classification in the family Asfarviridae.2023

    • 著者名/発表者名
      松山知正・桐生郁也・米加田徹・高野倫一・梅田剛佑・松浦雄太
    • 雑誌名

      Journal of general virology

      巻: 104(8) ページ: -

    • DOI

      10.1099/jgv.0.001875

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Electron probe microanalysis and gene expression analysis of melanization caused by summer atrophy virus in the Akoya pearl oyster (Pinctada fucata)2023

    • 著者名/発表者名
      佐野菜採・松山知正・井上誠章
    • 雑誌名

      Aquaculture

      巻: 579 ページ: 740218

    • DOI

      10.1016/j.aquaculture.2023.740218

    • 査読あり
  • [学会発表] アコヤガイ軟体部萎縮症におけるアコヤガイ外套膜のRNA-seq解析2023

    • 著者名/発表者名
      佐野菜摘・松山知正
    • 学会等名
      令和6年度日本水産学会春季大会
  • [学会発表] アコヤガイ稚貝における軟体部萎縮症の症状と水温との関係および回復個体の病態観察2023

    • 著者名/発表者名
      橋本直樹・松山知正・岩橋徳典・永井清仁
    • 学会等名
      真珠シンポジウム2023
  • [学会発表] 病気への取り組み:稚貝大量斃死の原因ウイルス2023

    • 著者名/発表者名
      松山知正
    • 学会等名
      真珠シンポジウム2023
    • 招待講演
  • [学会発表] アコヤガイ夏季外套膜萎縮症の貝殻症状の電子プローブマイクロアナライザー解析(EPMA)と外套膜の遺伝子発現解析2023

    • 著者名/発表者名
      佐野菜採・松山知正・井上誠章
    • 学会等名
      真珠シンポジウム2023
  • [学会発表] EPMA of the Deposit on the Inner Surface Shells and Gene Expression Analysis of the Mantle Tissue Infected with Summer Atrophy Virus in the Akoya Pearl Oyster (Pinctada fucata)2023

    • 著者名/発表者名
      佐野菜採・松山知正・井上誠章
    • 学会等名
      Aquatic Animal Health: Learning from the past to inform the future.
    • 国際学会
  • [学会発表] Viral and bacterial diseases of marine shellfish in Japan2023

    • 著者名/発表者名
      松山知正
    • 学会等名
      51st Scientific Symposium of the UJNR Aquaculture Panel “Control and Management of Aquaculture Disease”
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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