研究課題/領域番号 |
22H02460
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
中村 真也 琉球大学, 農学部, 教授 (30336359)
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研究分担者 |
玉城 絵美 琉球大学, 工学部, 教授 (30515086)
木村 匠 琉球大学, 農学部, 准教授 (10794498)
宮本 英揮 佐賀大学, 農学部, 准教授 (10423584)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | リアルタイム観測 / 地すべり / クチャ / 島尻マージ / 褐色火山灰土 / 草千里ヶ浜軽石 / 完全軟化強度 / 残留強度 |
研究実績の概要 |
2022年度は、斜面におけるリアルタイム観測のためのマルチセンサ装置を入手することに重点をおいた。半導体を使用する機器はこの数年にわたり入手が困難になっていたため、その確保のための打ち合わせを行い、観測に必要な条件を再整理してリアルタイム観測機器を入手した。先行実施しているリアルタイム観測により,土壌水分計の配置は4深度で十分と考えられたため,入手した機器のTRD接続数は4とした。 地すべり斜面のリアルタイム観測については、沖縄島北部(国頭層)および中部(島尻層群)の地すべり斜面において、土壌水分計、地下水位計、傾斜計による観測を行った(観測点はそれぞれ1つ)。土壌水分等のデータが蓄積されている。降雨後の土壌水分の増加のタイムラグは、難透水性地盤とされる中部の地すべり斜面においても、浅い領域ではさほど大きくなかった。 また、沖縄島の真栄平地内および比屋根地内、熊本阿蘇高野台地内の地すべりから採取した土の再構成試料についてリングせん断試験を行い、完全軟化強度および残留強度を多段階載荷方式により測定した。真栄平試料(第四紀石灰岩上の土壌:島尻マージ)の完全軟化強度および残留強度の速報値は、比屋根試料(島尻層群:クチャ)のそれらよりも大きな値となり、両者のせん断強度特性は大きく異なった。高野台地すべりから採取した褐色火山灰土試料および草千里ヶ浜軽石試料のせん断強度の速報値は先述の2試料よりも高かった。 さらに、西表島の上原地内で発生した地すべりの現地調査を行った。地すべりは急激な移動の後に静止状態にあり、今後の降雨によっては滑動が活発になる可能性がある。国機関による伸縮計設置をサポートし、滑落崖から土試料を採取した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地すべり斜面のリアルタイム観測については、観測機器設置の重点実施を2023年度とし,機器の購入をほぼ完了させた。これにより2023年度に速やかな機器設置が可能になった。また、沖縄島北部および中部の地すべり斜面において、それぞれ1つの観測点にてリアルタイム観測を実施しており、降雨量、土壌水分、地下水位、傾斜計のデータの記録を始めている。さらに、採取した複数の地すべり土試料について、物理試験およびリングせん断試験を実施し、せん断強度の測定を進めている。さらに、西表島上原地内で発生した地すべりの現地調査を行って土試料を採取し、せん断試験の準備を整えている。
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今後の研究の推進方策 |
地すべり斜面のリアルタイム観測については、機器の購入はほぼ完了しており、地すべり斜面への観測点の設置を順次実施する。リアルタイム観測点が既設の沖縄島北部および中部の地すべり斜面にそれぞれ2つの観測点を加え、3観測点からなる観測網とする。追加する観測点は,TDR計4、地下水位計1、地すべり変動を捉えるための計器1とこれらを接続する子機1(親機と通信)の構成とする。水位計はゲージ式水圧計測型とし、φ66mm調査孔を設けて孔内に設置する。地すべり変動観測のため、地表伸縮計を地すべりブロック頭部に設置する。観測点の追加について地方自治体による許認可を早期に得て、設置業務を依頼する業者との調整を6月中に終え、7月以降に観測をスタートする予定である。また、観測は、亀裂がみられるものの全体的滑動には至っていない不安定斜面でも実施する予定であり、このための網羅的な調査を実施する。 降雨、土壌水分、地下水位と地すべり変動との関係性の検討については、観測値の多重比較により統計分析する。共同研究者との打ち合わせにより分析方針を昨年度検討済みであり、新たなデータを追加して分析を行う。月1回の定期的な打合せを行い、分析を推進する。 地すべり土試料の物理試験およびリングせん断試験の継続に加えて、トリプルコアパックボーリングで不攪乱試料を採取して三軸圧縮試験(圧密非排水、間隙水圧測定)を実施する。リングせん断試験は一段階載荷方式の定速せん断によりせん断強度の確定を進める。熱帯土の入手のため、タイ、スリランカおよびオーストラリアの研究協力者と採取送付作業を依頼する。粘土鉱物の測定は音波処理反復法とX線回折法による。粘土画分はMg飽和グリセロール処理定方位試料により、他画分は乱方位試料により各粘土鉱物の相対含量を計算する。
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