研究課題/領域番号 |
22H02464
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
延原 肇 筑波大学, システム情報系, 教授 (80359687)
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研究分担者 |
丸山 勉 筑波大学, システム情報系, 教授 (00292532)
山口 佳樹 筑波大学, システム情報系, 教授 (30373377)
河合 新 筑波大学, システム情報系, 助教 (40803549)
林 久喜 筑波大学, 生命環境系, 研究員 (70251022)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ドローン / スマート農業 / 制御モデル / 3次元風速計測 / ダウンウォッシュ |
研究実績の概要 |
農業分野では、ドローン自身のロータが発する下向きの強力な風(ダウンウォッシュ)が計測時の致命的な外乱となり、圃場上の2から5メートルの超低空域は、ドローンによる計測やサンプルの物理的採取等が極めて困難な未踏の領域となっている。本研究では、飛行中にロータ角度を変化させることで、超低空域を安定飛行でき、かつダウンウォッシュの影響を対象物に及ぼさないドローンを開発することを目的としている。 2022年度は、提案コンセプトを具体的な設計に落とし込み、H型のフレームの4ロータを装備し、長軸シャフト両端の回転によってロータマウントの角度を変化させ、ダウンウォッシュの影響を機体外周に分散させるドローンを設計、開発した。開発した機体の有効性、つまり、ロータマウントの角度の変化によって、ダウンウォッシュの影響をどの程度外周に分散させることができるのか、逆に、機体直下にどの程度の無風空間を創出できるのかを定量的に観測するため、3次元的に機体直下の風速を計測可能な装置を開発し、提案機体構造の有効性を確認している。一方で、提案機体構造によって、機体直下に無風空間を創出できることは明らかになったが、機体の変形によって、フライトコントローラの制御パラメータをそのまま利用できず、変形に合わせた調整が必要であることも明らかになった。 2023年度は、提案する機体構造に関する運動方程式、制御モデルを定式化し、市販のフライトコントローラ(Pixhawk)の制御パラメータを変化させることで、どこまで安定化制御できるのかを、シミュレーションによって明らかにした。2022年度および2023年度で得られた本研究成果をまとめた結果、国際雑誌論文 IEEE Access(IF = 3.9)に採択されている。また、シミュレーションだけではなく、実環境において実証するため、より精密かつ軽量な機体開発を継続して行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、提案コンセプトを具体的な設計に落とし込み、H型のフレームの4ロータ(2重反転プロペラ)を装備し、長軸シャフト両端の回転によってロータマウントの角度を変化させ、ダウンウォッシュの影響を機体外周に分散させるドローンを設計、開発した。このドローンに関しては、当初よりも大型となり、機体直下のダウンウォッシュのふるまいを計測するための環境構築が、通常の体育館サイズの屋内環境をもってしても難しく、設計を大幅に変更することとなった。具体的には、2重反転プロペラをやめ、小型化することで、機体直下のダウンウォッシュの様子を観測可能となった。これによって、2022年度は計画よりも遅れ気味であったが、2023年度は、小型化された機体に関する、ダウンウォッシュの定量的な観測、さらに、運動方程式、制御モデルを定式化し、市販のフライトコントローラ(Pixhawk)の制御パラメータを変化させることで、どこまで安定化制御できるのかを、シミュレーションによって明らかにすることができており、当初の計画通りの進捗になっている。さらに、2022年度および2023年度で得られた本研究成果をまとめた結果を、国際雑誌論文 IEEE Access(IF = 3.9)に投稿し、採択されたのは、当初の予想以上の進展の一つとして判断することはできるが、2022年度の計画の遅れを勘案し、全体的には、順調な進展として位置付けるのが妥当と考える。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、提案する機体構造の有効性を、シミュレーションだけではなく、実環境において実証する。そのために、2022年度および2023年度に開発した小型の機体を、より精密にロータ機構を稼働させ、かつ軽量になるように開発を行なっている。この機体と、2023年度に得られた制御モデル、制御パラメータなどの知見を統合し、屋内環境および屋外環境において飛行させることを目標とする。さらにその先にある本研究の目標は、提案するダウンウォッシュ軽減ドローンに、軽量アームを装着し、物理的な干渉を行うことである。この軽量アームとして、2023年度から、紙をメインの材質とし、さらにアームの稼働が機体に影響を及ぼさない無反動の機構を準備しており、これを実証することも、2024年の目標として設定する。以上の目標が達成されれば、本研究の目的は十分に達成したと判断することができる。
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