研究課題/領域番号 |
22H02470
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
川村 健介 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (90523746)
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研究分担者 |
安田 泰輔 山梨県富士山科学研究所, その他部局等, 研究員 (40372106)
北川 美弥 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 上級研究員 (90506362)
八代田 真人 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (30324289)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 放牧管理 / ドローン / 深層学習 / 家畜行動 / 温室効果ガス / 牛糞 / 空間ンパターン / GIS |
研究実績の概要 |
放牧牛による草地への排糞は,土壌への栄養供給源であると同時にGHG排出源でもある。世界的な畜産物需要の増加に向けた生産拡大と環境負荷低減が求められており,そのためには牛糞の分布制御による局所管理に基づく精密な草地管理が必要である。本研究では、ドローンによってこれまで困難であった圃場内の牛糞空間分布を把握する技術を開発する。また、放牧牛の行動と滞在位置から糞の分布パターンに及ぼす環境要因との関係を解明し、その要因を制御することで糞の分布をコントロールすることが可能かを検証する。以上より、『草地生産性の向上』と『温室効果ガス(GHG)低減』を両立する新しい放牧管理法の開発を目指す。 初年度に引き続き,2年も継続して異なる放牧地のドローン画像の空撮と地上調査を行い,牛糞を検出するDung Detector(DD)モデルの精度向上に努めた。また2年目に予定していた放牧牛の行動・滞在場所と糞分布の解明に向けた放牧試験を実施した。GPS首輪を取り付けた放牧牛の滞在場所の関係を解析した結果,フェンス>被陰林>水飲み場の順番で滞在場所への影響が大きいことが認められた。他方,狭い圃場(約1ha)では,水飲み場の位置による牛滞在場所への影響は認められなかった。これらの結果を踏まえて,最終年度は大規模圃場での放牧試験による検証作業を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度からの継続課題である『課題1:ドローンによる牛糞検出手法の開発』において,予定どおりドローン空撮データの取得と牛糞検出モデルの更新が進んでいる。また,『課題2:放牧牛の行動・滞在場所と糞分布の関係解明』では,帯広畜産大学の牛舎改築にともない予定していた放牧地を使用できなかったが,一般農家の放牧地を利用して予定どおり,御代田,岐阜,北海道の3つの放牧地で放牧試験を実施した。以上の成果について,2023年12月に北海道大学で開催された北海道畜産草地学会大会において,学生がポスター発表を行い,ベストプレゼンテーション賞を受賞した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(最終年度)は,以下の3課題を継続して進めることでモデル精度の向上を進めつつ,課題2と3を中心に全体のとりまとめを進める。具体的には,帯広畜産大学畜産フィールド科学センター(以下、帯広)と幕別市の一般農家圃場(以下,農家圃場)の放牧地において試験を実施する。特に,課題2の放牧牛の空間分布の変動に与える環境要因(フェンス,被陰林,水飲み場)の影響解明と牛糞の空間分布パターンとの関係について検証する。 【課題1:ドローンによる牛糞検出手法の開発】 引き続き,各調査地で汎用小型ドローンを使用した空撮を年2~3回実施する。これまでに開発した深層学習手法のYOLO(You Only Look Once)によるモデルをアップデートする。また圃場内10ヶ所の地上部刈取りと化学分析から,草量と栄養価の推定も行い,課題2の放牧行動に影響する要因として使用する。 【課題2:放牧牛の行動・滞在場所と糞分布の関係解明】 課題1と同時期に帯広および農家圃場の放牧地で,地上調査とGPS首輪・加速度計を取り付けた牛の観測データから,放牧期間における行動と空間分布データを取得する。これに課題1で得た草量・栄養価の分布,地形,その他(フェンスや水飲み場等)の空間データを重ねることで、放牧行動に影響する要因について分析する。 【課題3:牛の行動操作による牛糞の分布制御の可能性を検証】 帯広と農家圃場の放牧地において,実証試験を実施する。具体的には,水飲み場とフェンスの位置・配置を移動したときに,放牧牛と糞の空間分布がどのように変化するのかを明らかにする。さらにこれらの変化を可視化するためのツールの開発に向けた準備を進める。
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