| 研究課題/領域番号 |
23K23745
|
| 配分区分 | 基金 |
| 研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
中村 進一 東京農業大学, 生命科学部, 教授 (00322339)
|
| 研究分担者 |
鈴井 伸郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子技術基盤研究所 量子バイオ基盤研究部, 上席研究員 (20391287)
肥塚 信也 玉川大学, 農学部, 教授 (30433866)
伊澤 かんな 東京農業大学, 生命科学部, 准教授 (40456603)
大津 直子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40513437)
橋本 洋平 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80436899)
野副 朋子 明治学院大学, 教養教育センター, 准教授 (90590208)
|
| 研究期間 (年度) |
2024-04-01 – 2026-03-31
|
| キーワード | グルタチオン / カドミウム / 細胞壁 |
| 研究実績の概要 |
本研究では先行研究で実施したトランスクリプトーム解析の結果、グルタチオンに応答して根で発現量が有意に増加し、カドミウム動態への影響が考えられるペクチンメチルエステラーゼの機能を明らかにする。また、根においてグルタチオンの挙動を制御していると考えられるγ-グルタミルトランスペプチダーゼなどがカドミウム動態に及ぼす影響を検証する。これらの研究を通じて得られる結果からグルタチオンがアブラナ根の細胞壁で選択的にカドミウムの保持を活性化する現象の分子機構の解明を目指している。本研究によって植物根におけるカドミウム保持機構に新たな知見をもたらし、重金属(カドミウム)汚染土壌での農作物の栽培を可能にする新技術の創出に繋げていきたい。 令和6年度は主にγ-グルタミルトランスペプチダーゼの機能解析に注力した。γ-グルタミルトランスペプチダーゼ活性は植物へのカドミウム処理・グルタチオン処理に応答していた。高等植物には複数のγ-グルタミルトランスペプチダーゼをコードする遺伝子が存在する。そのため、γ-グルタミルトランスペプチダーゼではひとつの遺伝子の機能を抑えても他の遺伝子が機能して、その働きを補完する。そこで本研究では、γ-グルタミルトランスペプチダーゼの阻害剤を用いて、カドミウム動態に及ぼす影響を調べた。γ-グルタミルトランスペプチダーゼ活性を抑制するとカドミウム動態が変化した。この実験結果は植物根におけるグルタチオンの挙動がカドミウム動態に影響を及ぼすことを示唆している。植物根におけるカドミウム動態の制御機構の解明には根におけるグルタチオンの挙動を明らかにすることも必要である。
|
| 現在までの達成度 |
現在までの達成度
2: おおむね順調に進展している
理由
グルタチオンの挙動を制御する酵素タンパク質のひとつγ-グルタミルトランスペプチダーゼの酵素活性を測定する実験系や遺伝子発現解析の実験系を確立できた。また、植物根でγ-グルタミルトランスペプチダーゼの活性を抑制する阻害剤を選抜できた。これらの実験系、γ-グルタミルトランスペプチダーゼの阻害剤を利用して、γ-グルタミルトランスペプチダーゼがカドミウム動態やグルタチオンの挙動に及ぼす影響を評価できた。前年度から継続して行っているアブラナ根におけるカドミウム動態を制御していることが予想されるペクチンメチルエステラーゼの機能解析ではアブラナ根におけるペクチンの状態の可視化に成功した。植物体内におけるカドミウムの化学形態の解析からはカドミウム動態制御機構の解明に向けた端緒が得られ、新たな研究課題を抽出できた。 また、根に与えたグルタチオンはカドミウム以外の重金属元素動態にも影響を及ぼしている可能性を示すことができた。グルタチオンが関与する複数の重金属元素の根における動態制御の分子機構の解明は、グルタチオンの新たな生理的機能を見出すことに繋がり、学術的にも意義深い。以上の点から本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
|
| 今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた研究成果を礎にそれぞれの研究課題を継続して検討していく。その中でも令和7年度はアブラナ根の細胞壁におけるカドミウム保持への関与が予想されるペクチンメチルエステラーゼの機能解析を中心に研究を進めていく。並行して、根におけるグルタチオンの挙動を制御するγ-グルタミルトランスペプチダーゼの機能解析にも引き続き注力していく。 そして、令和7年度はこれまでに得られた実験結果を国内外の学会で積極的に発表すること、学術論文として発表することにも注力していく予定である。
|
| 次年度使用額が生じた理由 |
アブラナ根におけるカドミウム分布およびカドミウムの化学形態の解析を行う目的でSPring-8に研究申請を行ったが、残念ながら不採択であった。これにより、当初この実験の実施を前提として、計画していた予算の執行に支障が生じた。具体的には解析準備のための実験や得られる成果を前提として実施の予定であった後続実験である。また、学術論文の発表に向けた準備が予定通り進まず、英文校閲の依頼も見送らざるを得ない状況となった。これらの事情により、当初の計画通りに予算執行が進まなかった。 今年度は、研究計画の最終年度である。そこで、実施に関して、リスクを含む予算執行計画の策定を避け、確実性を重視した計画のもとで研究を推進していく。これまでの研究で得られた成果を最大限に活用し、学会発表や論文投稿等を積極的に行っていく。
|