研究実績の概要 |
本研究で は自発的な固形飼料摂取が始まる前に粗飼料の早期経口投与を実施し、子牛消化管微生物の積極的な定着コントロールの可能性を探った。 2022年度は20 頭のホルスタイン種の新生子牛を対照群と処理群の2グループに分け、粗飼料の経口投与以外は両群とも同じ給餌プログラムで飼養した。処理群の子牛にはチモシー乾草とオオバコ粉末の混合物を3 日齢から 離乳する50 日齢まで毎日経口投与した。飼料摂取量と下痢の発生を毎日記録し、個々の子牛の体重 (BW) を毎週記録した。 7、21、35、49、および 56 日齢の子牛から新鮮な糞便を採取して、発酵パラメーターと細菌叢を分析した。 処理群の子牛では、21日齢までの平均日増体量が 対照群の子牛に比べて高値を示した。 糞便の pH、総揮発性脂肪酸、乳酸およびアンモニア態窒素濃度は、繊維飼料の経口投与による影響は認められなかった。 一方,プロピオン酸のモル比は7日齢で処理群で有意に高かった。 繊維飼料の経口投与を受けた子牛の糞便細菌叢の構成は、生後21日まで対照群のそれとは明確に異なっていた。 なかでも、乳酸菌およびPrevotella属の増加とClostridium perfringens の減少が顕著であった。 これら有用菌の増加と非有用菌の減少は、21日齢での処理群の子牛の体重増加に貢献した可能性がある。また、子牛糞便を用いた試験管培養試験により、本試験で用いた繊維資料のうち、チモシー乾草が腸内乳酸菌の増加に寄与することが明らかとなった。 本研究において、生後3日からの繊維飼料の経口投与は、哺乳期間を通じて子牛の体重増加および健康状態に悪影響は与えなかった。 したがって、繊維飼料の早期経口投与は、新生子牛の腸内環境の改善に寄与し、新生子牛の成長成績を改善するものと考えられた。
calf, early fiber feeding, hindgut environment, microbiota
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