研究課題/領域番号 |
22H02491
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 正寛 東北大学, 農学研究科, 教授 (70370658)
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研究分担者 |
齋藤 ゆり子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 研究員 (20885024)
小川 伸一郎 京都大学, 農学研究科, 助教 (50804192)
西浦 明子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 主任研究員 (90602037)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 制限付き選抜 / 遺伝的改良量 |
研究実績の概要 |
改良したい複数の形質(改良形質)の中に、①集団平均が最適値に達している形質(産卵鶏の卵重等)、②経済性が評価できない形質(体型等)、③比率の形質(飼料要求率等)を含む場合、④改良形質に改良目標値を設定する場合(ブタの系統造成等)、改良形質の総合的な遺伝的能力は、制限付き総合育種価(RABV)の推定値によって評価される。RABVの推定法は「制限付き選抜法」とよばれ、「制限付きBLUP法」や「FSI-BLUP法」が育種現場で用いられている。しかし、これらの方法は汎用性に乏しく、より優れたRABVの推定法が必要とされている。 本年度は、まず制限付き選抜法の1つである制限付き最良線形不偏予測法(制限付きBLUP法)に代わる方法として、昨年度考案した遺伝的能力評価に用いる集団中のすべての個体情報(最良線形予測)を用いて形質間の重み付け値を算出する方法の有効性を、ブタの系統造成集団集団を想定したモンテ・カルロ法によるコンピュータシミュレーションにより検証した。その結果、従来用いられてきた家系選抜指数により算出した重み付け値よりも優れていることが明らかとなった。 次に、一日平均増体重および飼料摂取量の遺伝的パラメーターを用いて血統情報を発生させ、飼料要求率の遺伝的パラメーターを推定した。これらの遺伝的パラメーターに基づき、通常の選抜指数法、多形質のBLUP法、制限付き選抜指数法および制限付きBLUP法によるシミュレーションプログラムを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の達成度は、ほぼ当初の計画通り順調である。本年度は、昨年度開発した新たな制限付き選抜法として、現在用いられている制限付き選抜法(FSI+BLUP法)の改良型の詳細な有効性を検証するため、3形質における遺伝的パラメーターを用いて形質および血統データを発生させるモンテ・カルロ法によるシミュレーションプログラムによる検証を行った。その結果、従来の方法よりも制限付き育種価の推定精度が高いことおよび遺伝的改良量が大きくなることが明らかとなった。現在、この方法とは異なる制限付き選抜法を開発中であり、制限付きBLUP法との比較を行うため、新たなシミュレーションプログラムを開発予定である。
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今後の研究の推進方策 |
複数の形質の相対希望改良量を達成するための新たな選抜法として、制限付き最良線形不偏予測法(制限付きBLUP法)がある。しかし、制限付きBLUP法は制限付き育種価の予測誤差分散の算出法が確立されていない。また、制限付きBLUP法により予測された育種価と多形質のBLUP法による予測育種価との関係も明らかではない。そこで、制限付きBLUP法において明らかになっていない項目について理論的検討を行う。また、新たな制限付き選抜法を開発中であり、制限付きBLUP法との比較を行うため、シミュレーションプログラムを開発する。さらに、飼料要求率や飼料効率などの形質(比の形質)では分母の形質と分子の形質の育種価が明らかな場合でも、比の形質の育種価を求めることができない。そこで、分母の形質と分子の形質の遺伝率、遺伝相関、環境相関、変動係数の大きさとそれらの比の形質との関係をモンテ・カルロ法シミュレーションにより明らかにする。さらに、比の形質を含む複数形質の育種目標改良がある場合、制限付きBLUP法や制限付き選抜指数法を用いることによる効率的な選抜法を明らかにする。 さらに、母性遺伝効果が存在する形質において、直接遺伝効果と母性遺伝効果に最適な重み付け値を与える方法について検討するとともに、制限付きBLUP法による直接遺伝効果と母性遺伝効果のそれぞれに対し相対希望改良量を設定して選抜したときの、それぞれの遺伝的改良量の大きさについて検討する。
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