研究課題/領域番号 |
22H02500
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
目堅 博久 宮崎大学, 産業動物防疫リサーチセンター, 准教授 (90633264)
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研究分担者 |
齊藤 暁 宮崎大学, 農学部, 准教授 (30621792)
今内 覚 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (40396304)
岡川 朋弘 北海道大学, 獣医学研究院, 特任助教 (80829036)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | BLV / 牛フォーミーウイルス / マウス / ワクチン |
研究実績の概要 |
牛伝染性リンパ腫は、牛伝染性リンパ腫ウイルス(BLV)の感染を原因とする牛の慢性致死性感染症である。畜産業の経済的被害が大きく、感染対策が難しいことから、ワクチンの実現が望まれている。1980および90年代の論文では、不活化ワクチンで2度免疫した後の中和抗体価が高い時期であれば、BLVの感染を阻止できることが報告されている。そこで本研究は、持続感染する牛フォーミーウイルスにBLV抗原を組み込むことで、中和抗体価を長期に渡って高い値で維持できるBLVワクチンを開発できると考えた。本研究は、研究項目①.組換え牛フォーミーウイルスの作成、研究項目②.BLVとの組換えウイルス作成とマウス感染モデルの構築、研究項目③.牛への組換えウイルス接種で構成される。2年目である2023年度は、研究項目①と②を実施した。①については、牛フォーミーウイルス全長を組み込んだウイルスベクターの構築に成功した。さらに、構築したベクターから牛フォーミーウイルスのアクセサリー蛋白質であるBorf-2領域を、BLVの主要な抗原であるgp51に置換した。その全長配列をロングリードシークエンスで確認し、変異や挿入等がないことを確認した。今後は組み換えウイルスの回収に取り組む。②については、過去の論文を参考にし、マウスに牛フォーミーウイルスを接種した。牛フォーミーウイルスを長期間培養した培養細胞上清をマウス(C57BL/6)に接種した場合に限り、一部のマウスの脾臓で感染が成立した。しかし、その感染率は低く、ワクチンの評価に用いるマウス感染モデルとしては不十分であるという結論に至った。そこで、現在はインターフェロン受容体ノックアウトマウスを使った、新たなマウス感染実験系に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
牛フォーミーウイルスベクターの構築に成功した。また、ZsGreen1を使った研究から、遺伝子の挿入・置換部位としてBorf-2が適当であることがわかった。さらに、Borf-2をBLVのgp51に置換したベクターを構築し、その配列に変異や欠損がないことを確認した。以上から、組換えウイルスの作成は順調に進んでいる。一方で、マウス感染モデルについては大幅な軌道修正が必要である。過去の論文のとおり、動物フォーミーウイルスはたしかに正常マウスに感染するが、その確率は低いうえに、感染ウイルスに大きな配列の欠損があるなど、ワクチンの評価等に用いるには不十分である。そこで当初の予定を変更して、遺伝子組換えマウスを使った牛フォーミーウイルスのマウス感染モデルの構築に取り組む。遺伝子組換え実験に該当するため、申請等の手続きを進めている。
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今後の研究の推進方策 |
組換えウイルスの回収と細胞への感染実験を予定している。感染細胞でBLV gp51の発現を確認するとともに、その安定性を評価する。遺伝子組換えマウスを使った牛フォーミーウイルス野外株の感染実験を開始する。遺伝子組換えマウスへの牛フォーミーウイルスの感染が確認できた場合は、遺伝子組換えウイルスのマウスへの接種試験を検討する。
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