研究課題/領域番号 |
22H02502
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 奥羽大学 |
研究代表者 |
櫻井 敏博 奥羽大学, 薬学部, 准教授 (70568253)
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研究分担者 |
草間 和哉 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (30579149)
唄 花子 北海道大学, 農学研究院, 助教 (60775443)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ウシ / SNX5 / ウシ内在性レトロウイルス |
研究実績の概要 |
本研究課題では、着床が成立する子宮内環境の解析ならびに着床前の胚で見られる二核化栄養膜細胞の分子機構を明らかにすることを目的としている。
受精不全または初期胚喪失を起因とする妊娠喪失は、栄養膜細胞と子宮内膜間での生化学的コミュニケーション不足によるものと考えられている。この情報伝達を制御する分子が同定されれば、早期妊娠損失の分子メカニズムがよりよく理解されると考える。そこで、非妊娠または胚性喪失中の雌の検出マーカーとなる候補分子を同定するため、7日目(0日目=発情日)の胚移植雌牛から17日目、20日目、22日目に末梢血を採取し、メタボロームおよびプロテオーム解析を行った。メタボローム解析では、血清成分の一部を妊娠しているか否かに分類した。iTRAQ解析では、上位25個のタンパク質を用いたヒートマップ解析により、20日目、22日目に妊娠しているか否かに分けた。さらに、受信者動作特性曲線(ROC)解析により、非妊娠未経産牛を検出する5つの候補タンパク質が特定され、そのうち22日目の血清中のSNX5が最も高い曲線下面積(AUC)を示した(0.983)。 また、ウェスタンブロット法を用いて、非妊娠未経産牛の22日目の血清中にSNX5を検出した。これらの結果は、22日目の血清中のSNX5が高いことが、未経産牛の早期妊娠喪失を予測できることが示唆された。 また、ウシ内在性レトロウイルスのBERV-12571(仮称)は、着床前の胚(妊娠17日)、子宮ならびに精巣特異的に発現していることが確認できた。しかしながらBERV-12571は、ウシ栄養膜細胞株BT-1ではその発現は確認できなかった。現在、精巣での発現部位を同定するため、in situ hybridizationによる局在解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
着床が成立する子宮内環境の解析では、不受胎牛(胚性喪失牛)血清におけるメタボロームならびにプロテオーム解析の結果、SNX5のでの発現が上昇することが確認できた。当初の計画では、着床成立に関与する因子の探索を目的としているが、不受胎牛の早期発見のための因子が同定できたのは、着床不成立の一因を解明する上でも有意義な結果を得ることができたと考えられる。また、BERV-12571(仮称)が着床前の胚のみならず、子宮・精巣特異的に発現していることが確認でき、BERV-12571の機能を予測する上で重要な知見が得られている。BERV-12571の精巣での局在が分かれば、精子形成への関与などBERV-12571の機能が予測できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
二核化栄養膜細胞の分子機構の解析を進めていく。そのために、栄養膜細胞株の二核化誘導法を検討していく。具体的には、内在性レトロウイルスのLTRの解析を行い、転写制御機構を明らかにすることで、二核化誘導法を確立していく。LTR活性は、ウイルスの遺伝子調節や生物学的特性に重大な影響を及ぼすと考えられており、ERVの転写活性は一般に遺伝子の上流にある5'LTRのU3内のプロモーター領域の塩基配列と宿主細胞の動物種と組織細胞の種類、ならびにレトロウイルスの遺伝子自身によって支配される諸因子によって調節される。また、レトロウイルスのLTRは組織細胞指向性を決定する主要な要因である。U3、R、U5部分からなるLTRのU3部分にはエンハンサー配列およびプロモーター配列(CATボックス、TATAボックス)があり、R部位にはポリA付加シグナル(AATAAA)が見出されている。そこで、二核細胞に特異的に発現する内在性レトロウイルスのBERV-K1ならびにSyncytin-Rum1のLTRのクローニングを行う。また、SNX5を利用した早期妊娠喪失予測デバイスを開発を進めていく。
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