研究課題
ウマヘルペスウイルス1型 (EHV-1) は神経細胞へ潜伏感染することが知られており、その成立にはウイルス遺伝子の発現抑制が関与すると推測されるが、詳細は不明である。本研究では、未分化状態においてEHV-1に高い感受性を示すが神経分化によって著しく感受性が低下するラット脳由来細胞株Rn33B-A68B2Mを潜伏感染モデルとして用い、神経分化状態と未分化状態におけるEHV-1増殖性の相違を規定する分子機構を解明し、神経細胞におけるEHV-1潜伏感染の成立機序について考察を行うことを目的とする。令和4年度は、EHV-1を感染させた未分化Rn33B-A68B2M細胞より全RNAを抽出し、EHV-1 IE 遺伝子のプロモーター領域より転写されるノンコーディングRNA(ncRNA)の塩基配列を決定した。EHV-1を感染させた未分化細胞と分化細胞におけるncRNAの発現をノーザンブロット法によって検索したところ、未分化細胞においてncRNAの発現が認められた。一方で、分化細胞におけるncRNAの発現レベルは非常に低いことが確認された。さらに未分化細胞におけるncRNAとIE遺伝子の発現を経時的に検索したところ、両遺伝子は共にEHV-1感染後14時間目より発現することがわかった。次に、ncRNAがIE遺伝子の転写効率に与える影響をルシフェラーゼレポーターアッセイにより評価したところ、ncRNAはORF12存在下でIE遺伝子の転写を促進することが明らかとなった。最後に、ncRNAのEHV-1感染における影響を検証する目的で、感染後24時間目におけるウイルス感染細胞数をncRNA導入細胞と非導入細胞で比較したところ、ncRNA導入により感染細胞数が増加することがわかった。
2: おおむね順調に進展している
令和4年度の研究により、EHV-1感染神経細胞株においてIE遺伝子プロモーター領域から転写されるncRNAの配列と機能を明らかにすることができた。
当初の予定通り、IEプロモーター ncRNAについてはin vivoにおける発現解析を進める。また、ORF63 (ICP0遺伝子) の3’非翻訳領域を認識するmiRNAの存在を確認し、さらにクローニングを試みる。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件)
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