研究課題/領域番号 |
22H02512
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
白藤 梨可 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 准教授 (00549909)
|
研究分担者 |
麻田 正仁 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 准教授 (40587028)
近藤 大輔 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (90708364)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | マダニ / 卵黄タンパク質前駆体 / バベシア / 脂肪体 / 卵巣 / 中腸 / 体液 / 原虫伝播 |
研究実績の概要 |
(1)脂肪体・卵巣特異的Vg-2遺伝子の発現を抑制した雌ダニに、バベシア原虫感染牛赤血球を吸血させた。Vg-2遺伝子発現抑制群の雌ダニおよび対照群の雌ダニより個別に体液を採取し、バベシアDNAを定量的に解析したところ、対照群に比べ、Vg-2遺伝子発現抑制雌ダニの体液中のバベシアDNAレベルが有意に低下したことを見出した。このことは、脂肪体で合成され体液中に分泌されるVg-2が、体液中のバベシアの生存あるいは、バベシアの卵母細胞への侵入過程において、重要な役割を担うことを示唆する。 (2)次いで、中腸特異的Vg-1のバベシア伝播における役割を解析する手法の確立を試みた。中腸上皮細胞にはDigestive cell(DC)とBasophilic cell(BC)があると言われているが、Vgを産生する細胞がDCとBCのいずれのタイプに該当するかは不明な点が多い。そこで、吸血後の雌ダニの中腸組織凍結切片を作製し、Vg-1特異的プローブを用いたin situハイブリダイゼーションを行った。その結果、吸血が完了してもなお、マダニ中腸上皮細胞内にVg-1 mRNAが検出され、Vg-1合成が行われる細胞が存在することをmRNAレベルで確認することができた。現在、Vg-1 mRNAが検出されたタイミングと細胞のタイプを特定するため、より詳細な観察を進めている。今後、これらの知見を、中腸上皮を構成する細胞の分離法確立に応用する。また、in situハイブリダイゼーションと免疫染色により中腸組織切片上でVg-1およびバベシアを同時に検出する手法を検討した。 (3)既発表論文を参考に、in vitro培養系におけるバベシア有性生殖期虫体の誘導法を実施し、マダニへの人工吸血試験に応用するための準備を整えた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記載の研究成果に関し、論文発表ならびに学会発表を行い、成果の公表に努めた。今年度に得た知見ならびに確立した研究手法は、来年度以降の研究推進に繋がる重要な成果であり、おおむね順調に進展したと評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度に得られた研究成果をもとに、2023年度計画に沿って以下の内容について取り組む。 (1)吸血雌ダニ中腸より上皮細胞を分離し、蛍光タンパク質発現バベシア感染牛赤血球と共培養する。また、予め作出したバベシア有性生殖期虫体との共培養も試みる。経時的に細胞を回収し、蛍光顕微鏡下でバベシア感染中腸上皮細胞のライブイメージングを行う。さらに、バベシア感染中腸上皮細胞より核酸・タンパク質を抽出し、Vg-1とバベシアを遺伝子・タンパク質レベルでも検出する。 (2)吸血雌ダニより採取した中腸組織を培養液に浸漬し、上記(1)と同様にバベシア感染牛赤血球と共培養する。経時的に中腸組織の一部を回収し、蛍光顕微鏡下で観察する。また、一般染色および免疫染色用に組織切片を作製し、中腸上皮細胞内のVg-1とバベシアを検出する。 (3)上記のin vitro実験系の他、牛赤血球置換SCIDマウスを用いたバベシア感染マダニの作出を試みる。牛赤血球置換SCIDマウスに蛍光タンパク質発現バベシア感染牛赤血球を接種し、血中にバベシアが認められた時点で雌ダニを吸血させる。経日的に雌ダニを回収・解剖し、上記と同様、蛍光顕微鏡下での中腸内バベシアの観察、組織切片作製、核酸・タンパク質抽出とそれらサンプルを用いた種々の解析を行う。 (4)得られた研究成果について、学術誌、国内・国際学会にて発表し、積極的に発信する。
|