研究課題
着床不全は生殖医療の残された大きな課題である。胚浸潤は、子宮内膜間質から剥離した上皮を胚の栄養膜が貪食しながら間質へ浸潤し、初期脱落膜に直接的に接触することで栄養膜が活性化し浸潤能を高めているという仮説を持っており、本研究ではこの仮説を検証し、着床不全の発症機序を明らかにする。本研究により、ヒト着床不全の新規診断法の基盤となる知見を見出すことができれば、将来的に着床不全診療の技術開発へ繋がる。今年度は、野生型マウスの胚浸潤過程の着床部位子宮を用いて、Visium空間的遺伝子発現解析を行った。着床部位の上皮・間質(初期脱落膜)・栄養膜という空間情報をもとに、これらの組織に特異的に発現する遺伝子群を選んで視覚化することができた。胚浸潤異常をきたすHIF2α欠損マウス子宮ではLysyl oxidase(LOX)発現が低下しており、HIF下流分子としてLOXを見出した。子宮特異的LOX欠損マウスを検討したところ、産仔数減少と胚浸潤異常を確認した。胚浸潤過程のLOX欠損子宮を用いて、Visium空間的遺伝子発現解析を行ったところ、LOXと関連する特徴的な遺伝子変化を見出すことができた。また、子宮のEZH2欠損マウスが胚浸潤障害をきたす別のマウスモデルとなることを見出した。組織透明化による着床部位の組織形態評価を行ったところ、EZH2欠損マウスでは着床期の子宮管腔構造(implantation chamber)に異常をきたしていることが分かった。EZH2がPRC2-H3K27me3を介して細胞周期調節因子の発現をヒト着床期子宮内膜において、着床不全患者では不妊治療で妊娠したコントロールと比較して、EZH2が低下していることが示された。
2: おおむね順調に進展している
予定通り研究進行し、研究成果が得られている。
順調に研究が進んでいるため、今後も計画通りに研究を遂行する。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 1件、 招待講演 14件) 産業財産権 (2件) (うち外国 1件)
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