研究実績の概要 |
本課題ではウイルス感染現象の理解およびその感染制御法の発案を志向した構造生物学的研究を展開する。ここ数年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックが世界中で猛威を振るってきた。その原因ウイルスSARS-CoV-2に関して世界中の研究者があらゆる観点から研究を進めているが、いまだ不明な点が多い。また、B型肝炎ウイルス(Hepatitis B virus, HBV)を原因とする慢性肝炎に起因する肝硬変や肝がんにより世界中で多くの人が苦しんでいるが、その侵入機構に関して不明な点が多い。本課題では次のの2点に関して研究を進める。 1.SARS-CoV-2のmembrane (M) タンパク質によるウイルス粒子形成機構の解明 2.HBVの肝細胞への侵入機構の解明 昨年度は、1については、Mタンパク質の2量体構造のクライオ電子顕微鏡での構造解析に成功し、論文発表を行った(Nature Communications, 2022)。Mタンパク質の2量体はlong formとshort formの2つの異なる状態を形成することが明らかになった。2つの異なる状態は粒子の形態形成に関与することが予想される。また、Mタンパク質のウイルス内側のドメイン部分においてRNAやNタンパク質と相互作用することを示した。2については、HBVの侵入を仲介する宿主側の受容体として同定されている胆汁酸トランスポーターNTCPのアポ体の構造決定に成功し論文発表を行った(Nature, 2022)。NTCPは膜貫通領域にトンネルを形成しており、NTCPの細胞外表面とトンネル領域がHBVのLHBとの相互作用に関与することを示す結果が得られた。
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