研究課題/領域番号 |
22H02567
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
西山 賢一 岩手大学, 農学部, 教授 (80291334)
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研究分担者 |
塚崎 智也 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (80436716)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | タンパク質膜挿入 / タンパク質膜透過 / 糖脂質 / MPIase |
研究実績の概要 |
モデル生物大腸菌において、膜タンパク質は一連のタンパク質性因子や糖脂質MPIaseも協調的な作用により細胞質膜に挿入し、高次構造を形成して機能発現する。MPIaseはタンパク質膜挿入・膜透過に関わるトランスロコンSecYEGやTatABC、YidCと相互作用して作動するだけでなく、膜タンパク質複合体全般と協働し、膜タンパク質のバイオジェネシス全般に関与している。本研究では、MPIaseの構造と機能に関して、遺伝学的解析、化学合成標品を用いた生化学的解析、プロテオーム解析により詳細に明らかにすることを目的として研究を進めた。MPIaseはCDPジアシルグリセロール生合成酵素CdsAやそのパラログYnbBの作用により生合成が開始する。MPIaseは低温下で発現量が即座にかつ持続的に増加する。この低温誘導にCdsAの転写量増加が関与する。cdsA遺伝子のプロモーターを温度応答しないものに交換したとき、YnbBの転写量が増加してMPIaseが低温で増加することを明らかにした。さらに、確定していなかったCdsAの開始コドンについて部位特異的変異を導入して決定したところ、複数の非典型的な開始コドンが作動し、CdsAの発現量を制御していることを明らかにした。タンパク質膜挿入の生化学的解析では、糖鎖繰り返しユニットが2個以上あればYidCとの協働が可能になること、3個以上あれば基質膜タンパク質を可溶化できることを明らかにした。さらに、TAT膜透過にMPIaseが必須であることを示し、論文投稿した。前年度に実施したMPIase枯渇膜を用いたプロテオーム解析では、複合体を形成する膜タンパク質や膜貫通領域の数が多い膜タンパク質の発現量が大幅に減少することが判明した。発現量が大幅に減少する膜タンパク質約10種について、MPIase枯渇膜で膜挿入効率が大幅に減少することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TAT膜透過へのMPIaseの関与に関する論文の公表が遅れているが、CdsAの発現制御に関して予想外の新たな知見が得られた。他の部分に関しては概ね計画通り進展しているので、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
TAT膜透過に関する論文はできるだけインパクトの高いジャーナルに公表することを目指す。CdsAの発現制御に関する研究は、本計画の延長として位置付け、最終年度内に論文発表まで行う。プロテオーム解析についても最終年度内に論文にまとめる。
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