研究実績の概要 |
本研究では,我々が独自に開発したオルガネラ間コンタクトサイトに局在するタンパク質を網羅的に同定する方法を用いて新たに見出したオルガネラコンタクトサイト局在タンパク質の機能解明を目的としている。具体的にはヒトER-ミトコンドリア間や,出芽酵母の核膜-液胞間,ミトコンドリア-液胞間コンタクトサイトに局在することが示唆されている新規因子の機能を解明する。 特に昨年度は核膜-液胞間コンタクトサイト(NVJ, Nuclear-Vacuole Junction)に局在することが示唆されていたタンパク質の内,4つの因子が新規NVJ因子であることを確認し,Gdn1, 2, 3, 4と命名した。NVJ形成コア因子であるNvj1, Vac8を欠失した細胞ではGdn1はNVJに集積できなくなっていたことから,Gdn1がNVJのコアサブユニットに依存してNVJに集積することがわかった。また興味深いことに,Gdn1, 2, 3, 4はグルコース飢餓依存的にNVJに集積する因子であることがわかった。さらにGdn1に関して研究を進めたところ,Gdn1が欠損した酵母株ではGdn2, 3, 4がNVJ局在に局在できなくなることがわかった。この結果から,Gdn1がGdn2, 3, 4のNVJ局在化に関与する上流因子であることがわかった。さらに研究をすすめることで,グルコース濃度依存的にNVJが拡大するメカニズムの解明に貢献する研究成果が得られると期待される。 ヒトミトコンドリア-小胞体間コンタクトサイトに関しては,同定していた多くの候補因子100種類程度を全てクローニング氏,細胞内で過剰発現させ,ミトコンドリア-小胞体間コンタクトサイトの形成に影響する因子を探索した。しかしながら,ミトコンドリア-小胞体間コンタクトサイトの形成に顕著に影響する因子を同定することはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
独自に開発したオルガネラ間コンタクトサイトに局在するタンパク質を網羅的に同定する方法を用いて,出芽酵母の核膜-液胞間コンタクトサイトに集積する新規因子を4種類同定すつ頃に成功した。さらにこれらの因子が,グルコース枯渇時にNVJに集積することや,Gdn1と命名した因子が,他のGdn2, 3, 4のNVJ局在に重要であることがわかるなど,当初想定していたよりも順調に解析が進んでいる。ただしその一方で,ヒトミトコンドリア-小胞体間コンタクトサイトに集積する因子の解析に関しては,多くの既知因子が同定され,実験系がうまく機能することは確認できているが,明確な新規因子の同定ができていない状態である。具体的には,候補因子を過剰発現することで,ミトコンドリア-小胞体間コンタクトサイトが拡大する因子を探索したが,そのような因子を同定することはできなかった。これらの結果を総合して,概ね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,出芽酵母の核膜-液胞間コンタクトサイトに集積する新規因子として同定した4種類の因子の機能解析を進める。具体的には,新たに同定したGdn1, 2, 3, 4と既知のNVJ因子感の相互作用関係の検討や,数多く存在するNVJ因子の内,どの因子がNVJ形成に必須であるか,その上流下流関係を検討していく。これらの研究を通し,NVJがグルコース依存的に拡大する分子機構とその生理的意義の解明を目指して研究を進める。 また,ヒトミトコンドリア-小胞体間コンタクトサイトに集積する因子に関しても引き続き解析を進め,ヒトミトコンドリア-小胞体間コンタクトサイトの形成機構と新しい生理的意義の発見に向けて研究をすすめる。
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