研究課題/領域番号 |
22H02579
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
菊川 峰志 北海道大学, 先端生命科学研究院, 准教授 (20281842)
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研究分担者 |
宮内 正二 東邦大学, 薬学部, 教授 (30202352)
塚本 卓 北海道大学, 先端生命科学研究院, 助教 (30744271)
海野 雅司 佐賀大学, 理工学部, 教授 (50255428)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 膜輸送 / イオンポンプ / 微生物ロドプシン |
研究実績の概要 |
本研究では、膜輸送蛋白質を研究対象とし、多段階の構造変化と、基質の各輸送ステップの関係の解明を目指している。試料としては、イオンポンプとして働く微生物ロドプシンを用いている。この蛋白質は、光で瞬間的に活性化できるため、短寿命で出現する種々の中間体を過渡応答解析によって検出できる。今年度は、Cl-ポンプロドプシンの分子機構について、以下の知見を得た。 1) 細胞質側のCl-輸送に不可欠なアミノ酸残基の同定 イオンポンプロドプシンの細胞質側は疎水的である。H+ポンプでは、この部位に位置する酸性アミノ酸が、高速なH+移動に重要であるが、他のイオンポンプの仕組みは不明であった。そこで、Cl-ポンプにとって重要なアミノ酸を探索したところ、6番目のヘリックスに位置するLeu及びPhe残基の置換によって、透過速度は100倍以上遅くなるが、その近傍に位置するLys残基を同時に置換すると、遅延が大きく回復することを見出した。この結果から、Cl-ポンプでは疎水性アミノ酸だけで輸送経路を構成し、他の親水性成分と相互作用させないことが高速なCl-移動に重要であることが示唆された。 2) Cl-放出・取込み中間体の同定 輸送メカニズムを考察する上で、これらの中間体の同定は必須である。そこで、Cl-選択膜を用いた電気化学的な測定を行なった。基質の放出と取込みは異なるタイミングで起こるため、溶液中の基質濃度の増加と減少を伴う。この濃度変化は非常に微小であり検出は難しいが、本実験では、Cl-ポンプロドプシンをCl-選択膜に吸着させることで、Cl-選択膜近傍で、比較的大きなCl-濃度変化を起こすことを狙った。その結果、濃度変化を膜電位変化として検出することに成功し、さらに、この結果を、Cl-ポンプロドプシンの過渡的な吸収スペクトル変化と比較することで、Cl-放出と取込みが起こる中間体を同定することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Cl-ポンプロドプシンについて、基質の放出と取込みが起こるタイミング(中間体)を同定したことで、その前後で、起こらなければいけない素過程も考察することが可能となった。また、一見、役割が無いように思える疎水性残基が、Cl-の高速移動に不可欠であるという知見を得たことで、H+ポンプとの違いを考察することも可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
Cl-選択膜を用いた測定は、本研究で確立したオリジナルの測定方法であり、Cl-輸送素過程と中間体生成の関係を解明する上で強力なツールとなり得る。今後は、種々のアミノ酸置換変異体にこの測定を適用することで、アミノ酸個々の役割を調べながら、Cl-輸送経路の解明を目指していく。
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