研究実績の概要 |
昨年度の研究において、線毛の重合・脱重合装置によって固体表面を自在に動き回ることのできるシアノバクテリア Synechocystis sp. PCC6803 株をモデル生物として扱ったが、今年度はさらに、マイコプラズマの一種であり、魚類に感染する Mycoplasma mobile を研究対象に含めた. 線毛の研究においては、細胞本体をガラス表面に吸着させ、線毛の引き込みを微小蛍光粒子を通じて可視化し、データの蓄積を行っている.2008年に研究室で開発した、2次元の画像から3次元の情報を取り出し、なおかつナノメートルの精度で粒子を追跡する光学顕微鏡による観察を進めた(Yajima, ... & Nishizaka, Nat Struct Mol Biol, 2008. 15: 1119-21).昨年度に引き続き、バクテリアの生育条件に加え、観察に用いるプローブの粒子径や溶液の粘度、撮影条件を絞り込み、これまで2次元でしか論じられてこなかったⅣ型線毛の動きの実体が、3次元的に明らかになりつつある. マイコプラズマの研究では、ガラス基板に結合しながら特徴的な旋回運動を伴う滑走の仕組みが何に由来するのかを検討し、新しい画像解析方法を開発した.バクテリアの形状の精密計測について、画像を表現する関数を組み合わせながら、その重心位置および非対称性を表すパラメータによって形状を近似するという独自の方法論である.Myocplasma mobile のフラスコ型の形状を、2つの2次元ガウシアンを組み合わせた関数でフィッティングをすることにより、その特徴的な形状を7つのパラメータで近似する方法を確立した.関数の中でも非対称な形状を表すパラメータはわずかひとつであり、そのパラメータと運動する軌道の曲がりについて、正の相関があることが確認できた.
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