現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
構造変異体の計測では、当初予定していた細胞内領域、二量体化アーム、細胞外領域それぞれを欠損させたEGFR(ΔICD, ΔArm, ΔECD)のうち、ΔICDとΔArmについては順調に計測が進んでおり、新しい知見も得られてきた。また、分子構造に起因する動態がシグナル伝達にどう影響しているか、より詳細に探るため、さらに細胞内領域と二量体化アームを二重に欠損させた分子(ΔICD/ΔArm)や、膜貫通ドメインの二量体間相互作用部位に変異を導入した分子(TM646, TM647)についても細胞株を作成し計測を進めており、当初の想定以上のデータが得られている。これらに加え、現在、膜貫通ドメインのみの変異体(TM)やC末のリン酸化領域のみ欠損させた変異体(ΔCtail)の細胞株の作成に取り掛かっており、EGFR各ドメインが動態や多量体形成に与える影響とシグナル伝達における役割をより正確に解析する。なお、ΔECDについては細胞外領域を全て削った変異体を構築していたが、細胞での発現に問題があることから方針を変更し、影響のない範囲で当該領域を欠損させた変異体の構築を進めることとなった。 また、スクリーニングへの応用を見据えた癌変異体の計測では、当初予定していたL858Rや薬剤耐性の二重変異体 L858R/D761YやL858R/T790Mに加え、二重変異株に効果のある薬剤に対して耐性を持つ三重変異株L858R/T790M/C797Sも細胞株を作成して計測を行っており、期待された効果が見られているとともに、耐性のメカニズムとの関連が示唆される結果も得られつつある。 さらに本研究の開始前、分子状態の大規模解析は運動状態のみ推定が可能であったが、会合体サイズの推定も可能なようにプログラムの改良を行った結果、解析により得られる情報が増え分子状態を定量的に表すマップの作成が可能となった。
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