2022年度は、RNA/RNP化学遺伝学を実現のため、低分子化合物に結合するRNAアプタマーの探索を行った。既存のアプタマーの殆どは哺乳類細胞内や動物個体内での動態が良くない低分子リガンドに対し結合するものであった。そのため、まず既に薬剤として生体内動態の良いことが明らかとなっているものに対して結合するRNAをin vitroでセレクションすることとした。10兆種類のRNA配列を含むライブラリを用いたSELEX (Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment) を行った。濃縮された配列に対し、次世代シーケンスにより解析を行い、候補配列を絞り込んだ。その配列に対し、試験管内での結合解析を行った。その結果、低分子化合物に結合するRNA配列を発見した。 また、低分子化合物に結合したときにRNAへの親和性が向上するタンパク質の探索についても検討した。これには、タンパク質エンジニアリングとRNAエンジニアリングの両方からアプローチした。まずは、タンパク質とリガンドのペアが結合した時にのみ結合するような配列をSELEXにより選別した。得られた配列に対して試験管内で結合を評価した結果、低分子リガンドの添加時に標的タンパク質への親和性が向上することが明らかとなった。また、RNA結合タンパク質と低分子リガンドに結合するタンパク質を融合したライブラリを作製し、その中から、小分子リガンド結合状態でのみRNAに結合するタンパク質を探索した。得られた配列に対して試験管内で結合を評価した結果、低分子化合物存在下で標的タンパク質への親和性が向上することが明らかとなった。
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