研究課題/領域番号 |
22H02609
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
落合 博 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (60640753)
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研究分担者 |
新海 創也 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級研究員 (60547058)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 高次ゲノム構造 / FISH / 転写 / 数理モデル |
研究実績の概要 |
遺伝子の発現制御には、プロモーターと遠位にあるエンハンサーとの物理的相互作用が重要な役割を果たしている。そのため、特定の細胞種では、細胞種特異的な高次ゲノム構造が形成される。しかし、この「特定細胞種の高次ゲノム構造」は、多数の細胞データから得られる「平均的」な構造で、実際には細胞間で顕著な多様性が認められる。この高次ゲノム構造の細胞間多様性が個々の細胞での遺伝子発現量の多様性や動態に影響を与える可能性が考えられるが、技術的な問題から明らかになっていない。本研究では、マウス胚性幹(ES)細胞を対象に、DNA/RNA-seqFISHを利用して遺伝子発現状態と高次ゲノム構造情報を多数の細胞から抽出する。さらに、マウスES細胞のHi-C情報をもとに、申請者らが開発した独自アルゴリズム(PHi-C)を利用して高次ゲノム構造を推測し、DNA/RNA-seqFISHによって得られる情報と統合する。統合情報を元に、さらにPHi-Cによって遺伝子発現状態特異的な高次ゲノム構造を推定する。申請者らが開発した特定内在遺伝子の転写と細胞核内局在を同時に可視化する技術によって生細胞内の高次ゲノム構造動態を定量し、PHi-Cデータの検証及び最適化を行う。これらを通し、高次ゲノム構造-遺伝子発現動態の関係性を定量的に解明する。 本年度は、マウスES細胞を対象にしてDNA/RNA-seqFISHを実施した。さらに、取得した画像を解析することで、特定遺伝子の転写活性状態ごとの高次ゲノム構造情報を得た。今後これを詳細に解析することで、高次ゲノム構造の細胞間多様性が個々の細胞での遺伝子発現量の多様性や動態に影響を与える影響に関する理解を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に顕微鏡の不具合によりデータ取得に想定外の遅れが生じた。しかし、データ取得以外の検討を進めることで、データ取得およびその後の解析をスムーズに進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
Nanogと相互作用する領域は、Nanogから上流60 Mb、下流60 Mbに散在している。この範囲内に存在し、マウスES細胞(E14Tg2a細胞)で発現のある82遺伝子を標的として、DNA/RNA-seqFISHを実施した。今後、同一細胞サンプルに対して、上記範囲内に設計した120遺伝子座を対象にDNA-seqFISHを実施し、高次ゲノム構造を1対立遺伝子レベルで解析する。得られたデータから、各遺伝子の転写状態ごとに高次ゲノム構造を分類する。また、マウスES細胞(E14Tg2a細胞)を利用した高解像度のHi-Cデータがすでに公開されている。このHi-Cデータを元に、研究計画1で対象とした領域の高次構造をPHi-Cを利用して多数推測する。さらに、研究計画1で得られた各遺伝子の転写状態ごとの高次ゲノム構造とPHi-Cで推測された構造をクラスタリングで分類する。さらに、PHi-Cを元にして推測されたデータを元に、各遺伝子の転写状態ごとの平均距離マトリックスを導出する。これを元に改めてPHi-C解析することで、特定遺伝子の転写状態に特徴的な高次ゲノム構造動態を推測できる。
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