研究課題
エンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれた細胞膜上の分子や外来性の因子の多くは、エンドソーム成熟(初期エンドソーム → 後期エンドソーム → リソソーム)と呼ばれる一連の過程を経て分解される。これまで酵母などのモデル生物を用いた研究から、進化的に保存された一群のエンドソーム成熟に関わる制御因子が同定されている。中でも、低分子量G蛋白質Rab5とRab7は鍵となる因子と考えられており、Rab5からRab7へのカスケード(変換)モデルが提唱されている(初期エンドソーム上のRab5がMon1-Ccz1を介してRab7を活性化することにより、後期エンドソームへと成熟するというモデル)。このモデルは哺乳動物にも適用されると広く信じられているが、実は哺乳動物細胞ではモデル生物のようなノックアウト実験による検証はこれまで行われていなかった。本研究では、哺乳動物細胞を用いてこれらの因子のKO細胞株を樹立したところ、それらの表現型が著しく異なることを初めて見出した。すなわち、Rab5-KO細胞は致死、Mon1-KO細胞は著しいリソソームの肥大化、Rab7-KO細胞では比較的軽度のリソソームの機能阻害が観察された。詳細な表現型解析の結果、Mon1-KO細胞ではRab5の過剰活性化により、エンドソーム成熟が著しく阻害されていることが明らかになった。また、Mon1依存的にRab5の不活性化を促進する因子として、新規Rab5不活性化因子・TBC1D18を同定することにも成功し、新たなエンドソーム成熟モデルを提唱した(Hiragi et al., J. Cell Biol., 2022)。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度は、エンドソーム成熟不全を示すMon1ノックアウト細胞を解析することで、その原因がRab7の活性化不全ではなく、Rab5の過剰活性化であることを突き止めた。また、Rabの不活性化因子と考えられている約40種類のTBC蛋白質ファミリーを網羅的に探索することで、Mon1依存的にRab5を不活性化するTBC1D18を新規に同定することにも成功した。これらの知見を元に、哺乳動物細胞におけるエンドソーム成熟の新たなモデルを提唱するなど、期待以上の成果を挙げることができた。
引き続き、エンドソーム成熟におけるMon1とTBC1D18の機能的相互作用について、解析を進めると共に、管状エンドソームの形成制御機構の解明にも着手する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 1件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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