研究実績の概要 |
エンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれた細胞膜上の分子や外来性の因子は、エンドソーム成熟(初期エンドソーム、後期エンドソームを経てリソソームで分解)と呼ばれる一連の過程を経て分解されるか、リサイクリングエンドソームを経由して再利用される。前者のエンドソーム成熟には、低分子量G蛋白質のRab5からRab7への変換が重要であり、初期エンドソーム上のRab5がMon1-Ccz1を介してRab7を活性化するだけでなく、Mon1がTBC1D18をリクルートすることでRab5を不活性化し、後期エンドソームへと成熟することが昨年度までに明らかになっている。しかし、Mon1とTBC1D18は直接結合しないことから、本年度はこの間を仲介する候補因子の探索を行った。また、後者のリサイクリングに関しては、クラスリン非依存性のエンドサイトーシス経路に関与する管状エンドソームに着目し、Rabファミリーによるその形態制御の分子基盤の解明にも取り組んだ。本年度は、管状エンドソームの形成に重要なRab22の上流活性化因子(グアニンヌクレオチド交換因子)の解析を行い、Vps9ドメインを有する機能未知のVps9d1という分子の同定に成功した(Nakashima et al., J. Cell Sci., 2023)。Vps9d1の一部はEEA1陽性の初期エンドソームに近接して局在し、Rab22の活性化を介して管状エンドソームの形成を促進することが明らかになった。このため、Vps9d1をノックアウトしたHeLa細胞では、管状エンドソームの形成能が著しく低下し、これに伴いクラスリン非依存性の経路でリサイクルされるCD147の細胞表面の量が有意に減少することが明らかになった。
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