研究実績の概要 |
令和5年度は、引き続き、細胞内コレステロール輸送機構に注目し研究を行った。大きな成果として、スピニング共焦点顕微鏡および全反射顕微鏡と生化学的手法を用いることによって、進化学的に保存されたコレステロール輸送タンパク質であるGRAMD1が、小胞体-ゴルジ接着部位において他の脂質輸送タンパク質であるOSBPならびにORP9と協調することで、細胞内のコレステロール分布を調整することを突き止め、論文として発表した(Naito et al., Nature Communications, 2023)。GRAMD1とORP9を同時に欠損させたノックアウト細胞においては、ゴルジ体および細胞膜にコレステロールが蓄積し、細胞内コレステロール産生機構の調節に異常が生じることを示した。また、GRAMD1のコレステロール感知領域であるGRAMドメインに注目し、適度なアミノ酸変異を加えることにより、新規コレステロール感知プローブであるGRAM-Wを開発し論文として発表した(Koh et al., Nature Communications, 2023)。さらに、GRAM-WをヒトiPS細胞から分化誘導した神経細胞に発現させることによって、ヒト神経細胞内においてコレステロール分布の可視化に成功した。引き続きコレステロール輸送タンパク質の一群を欠損させたノックアウトマウスと線虫の表現系解析を行い、細胞内コレステロール輸送機構の生理的役割に関して新しい知見を得た。
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