研究課題/領域番号 |
22H02632
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
榎本 秀樹 神戸大学, 医学研究科, 教授 (00360511)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | シュワン細胞 / 神経形成 / 神経幹細胞 / 神経堤細胞 / 神経堤症 / 神経芽腫 |
研究実績の概要 |
本研究は、我々が発見したシュワン性神経幹細胞が生体がどこに局在し、どのような機構でその神経形成能を発現するのか、さらにシュワン性神経幹細胞の異常がどのような疾患と関与するのかを解明することを目的とする。2022年度は、マウス発生各段階でシュワン細胞由来神経形成を全身性に解析した。その結果、発生中(E12.5)の前肢、後肢、肋間神経、横隔神経などさまざまな神経線維に沿って神経形成が観察された。つまり、シュワン性神経幹細胞は全身にくまなく存在することが示唆された。これらのシュワン性幹細胞由来ニューロンは個体差が大きく、発生が進むと数が減少することも分かった。すなわち、これらのニューロン群は偶発的に産み出された「異所性ニューロン」であることが示唆された。 シュワン細胞性神経幹細胞からニューロンが産み出される機構解明のために、正常およびGeneXヘテロマウスの前肢から、シュワン細胞をセルソーターで単離し、一細胞遺伝子発現解析を行った。PCAの結果、GeneXヘテロマウスで特異的に細胞が増えているクラスターがあり、そのクラスターは神経分化マーカーであるPhox2Bを高く発現することが分かった。 2023年度はこのクラスターを野生型およびGeneXヘテロマウス間で比較解析し、シュワン性神経幹細胞から神経形成を起こすのに必要な遺伝子群の同定を行った。発現量の異なる遺伝子群数個についてゲノム編集技術によりこの遺伝子を先天的に欠損するマウスを作成したところ、異所性ニューロンの数が増加したり、減少することが明らかとなった。すなわちGeneXの下流では異所性神経形成を正および負に制御する遺伝子群が働いていることが示された。また、この一部の遺伝子は神経芽腫の発症との関連が示唆されており、神経芽腫の発症にシュワン細胞由来異所性神経形成が関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
最も困難を伴うと予想された一細胞遺伝子発現解析が順調に進み、シュワン細胞由来神経形成に関わる新規遺伝子群が同定された。今後これらのデータセットをさらに詳細に解析することで、神経分化や異所性神経形成(パラガングリオーマや褐色細胞腫など)をともなう疾患群の発症機構解明にもつながっていくことが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、一細胞遺伝子発現解析で同定された遺伝子群の機能解析を進める。また、神経芽腫モデルにおけるシュワン細胞由来神経形成の意義についても解析を進める。
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