研究課題/領域番号 |
22H02634
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
齋藤 大介 九州大学, 理学研究院, 教授 (90403360)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 始原生殖細胞 / がん細胞 / 血管外遊出 / ニワトリ / ウズラ / 血行性移動 |
研究実績の概要 |
本年度は計画通り、「生殖細胞とがん細胞の血行性移動機構とその共通原理」を明らかにするべく鳥類の始原生殖細胞(PGC)とがん細胞を材料として研究を推進し、主に以下3点の実績を得た。 (1)血管外遊走時におけるPGCとがん細胞の挙動記載 血管外遊出は2つの過程、すなわちアレストと血管壁縦断移動から構成される。ライブイメージング解析から、PGCとがん細胞の血管外遊出の挙動が異なることが見出された。PGCでは、アレストは主にスタック(詰まり)によって起こる一方で、がん細胞の場合は血管壁への接着であることがわかった。血管壁縦断移動では、PGCは1つの大きな風船状細胞突起「ブレブ」を形成して移動するのに対し、がん細胞は糸状仮足(浸潤突起)とブレブのハイブリッド型の突起を用いて移動することが示された。(2)血管壁縦断移動に用いる突起の分子機構 血管壁縦断移動にPGCとがん細胞が用いるこれら細胞突起が、store operated calcium entry (SOCE)に依存することを明らかにした。この成果はbioRxiv(https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2023.06.12.544577v1.full.pdf)に投稿済みであり、現在査読付き論文投稿準備中である。 (3)PGCのブレブ形成は細胞外圧により誘導される PGCに外圧を加えるとSOCE依存的なブレブ形成が起こることを見出した。SOCEの上流機構として物理的ストレスの存在が示唆された。また、物理ストレスとSOCEの活性化を仲介する機構として核膜の進展である可能性を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度はPGCに加えがん細胞の血管内挙動の記載と、がん細胞のトラップのメカニズムの解明を到達目標としていたが、「ニワトリ血管系におけるがん細胞の血管外遊出挙動解析の方法論」、「PGCとがん細胞の血管外遊出機構(bioRxiv投稿済み)」の2つについて、査読つき論文投稿直前の段階に到達した。さらには到達目標を超える成果として、「SOCE上流機構としての細胞外圧力」、「ニワトリPGCを分取する新たな方法論の確立」などについても論文投稿の一歩手前の段階までくることができている。2年目の状況として研究進捗は極めて良好である。
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今後の研究の推進方策 |
PGCブレブ形成を誘導する最上流機構の1つが細胞外からの圧力であり、ブレブ形成の中心にSOCEがある証拠をつかんでいる。そこで今後は、物理ストレスとSOCEを仲介する分子機構の解明を進める。SOCEの活性化をモニターできるPGC(SERCaMP発現PGC)を作成し、圧力負荷環境における薬剤スクリーニングにより当該分子の特定を目指す。 血管壁縦断移動時におけるPGCとがん細胞の細胞突起形態の違いが生まれる原因を探る。2つの細胞主幹における表層Actin繊維と形質膜との結合能の違いに起因する可能性を得ているので、表層Actin繊維と形質膜をリンクする分子Ezrinの機能解析からこの可能性を検証する。
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