研究課題/領域番号 |
22H02644
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
五島 剛太 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (20447840)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 細胞分裂面 |
研究実績の概要 |
多細胞生物では、細胞分裂後に生じる2つの娘細胞が同一あるいは異なる性質を持つことが共に大切である。娘細胞の性質の違いには、細胞分裂面がどこにできるかが一つの鍵となる。本研究では、動物とは異なり細胞壁を持つ生物における細胞分裂面決定の分子機構を探究する。 前年度までに紡錘体の位置決め機構の一端を明らかにした。細胞核の配置も分裂面の決定の重要な要素であるため、今年度は、核の配置に関わるヒメツリガネゴケのキネシンARK(アルマジロリピート含有キネシン)の解析を進め、論文として発表した(Yoshida et al. 2023a)。 加えて、核膜タンパク質SUNに着目して研究を進めた。ヒメツリガネゴケに4つあるSUNについて単独あるいは多重の変異体を作出したところ、SUN2の変異により分裂面の方向が定まらないことを見出した。タイムラプス観察の結果、核の移動は正常だったものの、SUN2がないと分裂期核膜崩壊直前に核膜周辺に現れる微小管形成中心(MTOC)の配置が異常であることを突き止めた。その結果、変異体では核膜崩壊後、染色体を中央に並べた中期紡錘体の形成に遅れが生じた。これらの異常はSUN2タンパク質を発現することでレスキューされた。したがって、SUN2が核膜上で何らかの因子をリクルートし、その因子を介して微小管を核膜周りに集積させることが示唆された(Yoshida et al. 2023b)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒメツリガネゴケで微小管形成中心の位置決めに関わる最初の因子を見出し、論文として発表したため。論文の内容:植物細胞には中心体がなく、その代わりに非中心体微小管形成中心(MTOC)を利用して、紡錘体形成の開始時に急速に微小管の数を増やす。MTOC形成に必要な複数のタンパク質が同定されているが、MTOCが適切な場所に配置される仕組みは解明されていなかった。本研究では、ヒメツリガネゴケの有糸分裂前期において、核膜にMTOCを結合させるために、核膜タンパク質SUN2が必要であることを示した。活発に分裂している原始体細胞では、前期に微小管が核膜の周りに集積し、核の頂端側にMTOCが形成される。しかし、sun2ノックアウト細胞では、核膜周囲の微小管集積が損なわれ、頂端MTOCの配置が異常になった。核膜崩壊後、紡錘体内での染色体整列の完了が遅れた。これらの結果に基づき、SUN2が微小管を核膜に集積させることによって、紡錘体形成時に微小管を効率よく染色体に付着させる役割を果たしていることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
ヒメツリガネゴケの核膜タンパク質SUN2は微小管形成中心(MTOC)の配置に重要な役割を果たしていた(Yoshida, Oguri & Goshima. Physcomitrium patens SUN2 mediates MTOC association with the nuclear envelope and facilitates chromosome alignment during spindle assembly. Plant Cell Physiol. 2023)。ヒメツリガネゴケSUN2タンパク質自体に微小管と結合すると思われるドメインは存在していないので、なんらかの別の因子を介して微小管とリンクしていることが予想される。24年度以降、この因子の探索を行う。候補因子について、ノックアウト株を作成し、SUN2と同様のMTOC表現型を示すかどうかが指標となる。一方、ヒメツリガネゴケがコードする別のSUNファミリータンパク質(SUN1、SUN3、SUN4)の機能は未だ不明である。これらの因子の機能解析も進める。これまでに、これらの遺伝子の変異体を取得することを試みてきた。そして、一部の変異体については、細胞をライブで顕微鏡観察したところ、野生株(コントロール)やsun2変異体とは異なる細胞内動態表現型を出すことを見出した。ライブ観察の対象を広げ、また、時空間解像度を上げることで、何が異常になっているのかを正確に突き止め、タンパク質機能に迫りたい。
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