研究課題/領域番号 |
22H02647
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
近藤 侑貴 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (70733575)
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研究分担者 |
朝比奈 雅志 帝京大学, 理工学部, 准教授 (00534067)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 維管束 / 幹細胞 / 植物ホルモン |
研究実績の概要 |
本研究では、維管束分化誘導システムVISUALとそれを改良したVISUAL-CCを用いて、木部細胞・篩部細胞そして篩部伴細胞を誘導することで、維管束発生過程を構成生物学的な観点から研究を進めた。遺伝学解析から維管束幹細胞の確立に関して、新たに幹細胞形成に働く変異体を単離し原因遺伝子を特定することができた。表現型の解析から、この変異体では維管束幹細胞の確立が促進されること、また維管束幹細胞確立に関わるオーキシンの感受性に異常が生じていることがわかった。 また、維管束幹細胞の活性化に関して、シロイヌナズナの根における発光レポーターを用いたタイムラプス観察からサイトカイニン応答との関連性が見出された。サイトカイニンの役割を解析するため、VISUALを用いてサイトカイニン有無の条件でトランスクリプトーム解析をおこなった。生体内での機能解析のため、サイトカイニンのシグナルを強めたり弱めたり操作ができる遺伝学的ツールを作成し、形質転換植物を取得した。 また、篩部伴細胞分化に関して、篩部伴細胞誘導系VISUAL-CCより明らかとなった篩部伴細胞関連遺伝子の分化初期マーカーのプロモーターをクローニングし、プロモーター:ELUCの形質転換株の作成をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
維管束幹細胞の形成を制御する変異体を単離し、原因遺伝子を特定することができた。また、予想外な結果としてイメージング解析から植物ホルモンであるサイトカイニンが維管束幹細胞の活性化に働くことが見出され、順調にVISUALを用いた構成生物学的アプローチから幹細胞制御に重要な因子が単離されてきている。一方、篩部伴細胞形成に関しては、変異体の相補実験は進めているもののタグ付きの形質転換体の作成は順調にいっておらず、やや進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
維管束幹細胞の確立が促進される変異体ではオーキシンの感受性に異常が生じていることから、オーキシン応答と原因遺伝子との関係性について解析を進める。また、変異体における葉脈形成過程において、オーキシン応答がどのように変化をするかを時空間イメージング解析から明らかにする。また研究分担者と協力して、接ぎ木における維管束再接続の表現型も調べていく。 サイトカイニンによる幹細胞活性化のメカニズムについては、VISUALを用いたエピジェネティクス解析を含むマルチオミクス解析からせまっていく。またサイトカイニンシグナルの操作系を用いて、サイトカイニンシグナルの維管束発生への影響をin vivoで解析する。 篩部伴細胞誘導系VISUAL-CCより明らかにした初期遺伝子のレポーターラインを用いて更に効率の良い篩部伴細胞分化誘導系のスクリーニングを進めている。また、変異体のタグ付き相補実験を引き続き進め、形質転換植物が取得できればそれを用いてリン酸化及び相互作用因子解析などの生化学実験をおこなう。
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