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2022 年度 実績報告書

後肢の位置の多様性を生み出した進化的に獲得されたエンハンサー配列群の機能的解明

研究課題

研究課題/領域番号 22H02673
配分区分補助金
研究機関大阪公立大学

研究代表者

鈴木 孝幸  大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (40451629)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワード脊椎骨 / 後肢 / パターン / 遺伝子発現 / エンハンサー / 進化
研究実績の概要

我々はこれまでの研究で、「四肢動物の後肢の位置の多様性は、胎児期の中軸中胚葉に発現する分泌因子であるGdf11の発現開始タイミングの違いによって生み出される」と言う発生学的メカニズムを明らかにした。そこで本研究では、後肢の位置の多様性を生み出すGdf11の発現開始タイミングが、何故種によって異なるのか、その分子機構を明らかにすることを目的としている。そのために、頭から後肢までの脊椎骨の数が異なるスッポン胚、ニワトリ胚、マウス胚、シマヘビ胚を実験材料として用い、①これまでの実験ですでに進めてきた進化的に保存された2つのGdf11のエンハンサーによる四肢動物としての後肢の位置のおおまかな決定機構と、②種に固有な複数のエンハンサーによる後肢の位置の多様性を生み出した分子機構、を解析することで、四肢動物における後肢の位置の多様性を生み出した進化の分子実体を機能的な証明を持って明らかにすることを目指している。
初年度の研究では、これまで明らかにしてきたGdf11のエンハンサー候補領域をCRISPER/Cas9システムを用いて標的遺伝子破壊したマウスにおけるGdf11の発現量をRT-qPCRを用いて解析した。その結果、領域Bと領域Fを破壊するとGdf11の発現量が減少したことから両方ともそれぞれGdf11のエンハンサーであることが明らかとなった。次に、シマヘビにおけるGdf11のエンハンサー候補配列を見つけるために、これまでに解読したシマヘビの全ゲノムにシマヘビの前体節中胚葉の細胞のATAC-seqの結果をマッピングし、オープンクロマチンの領域を明らかにした。Gdf11遺伝子座周辺の10個の領域をPCRで単離し、tk-EGFPベクターの上流に挿入した。ニワトリ胚を用いて前体節中胚葉におけるエンハンサー活性を調べた結果、弱いエンハンサー活性を示す領域のみであることが判明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2022年度は、これまでの研究で明らかにしてきたGdf11のエンハンサー候補領域をCRISPER/Cas9システムを用いて標的遺伝子破壊したマウスにおけるGdf11の発現量をRT-qPCRを用いて解析した。その結果、領域Bと領域Fを破壊するとGdf11の発現量が減少したことから両方ともそれぞれGdf11のエンハンサーであることが明らかとなった。また骨染色を用いて後肢の位置を調べた結果、ホモのノックアウトマウスにおいては後肢の位置が脊椎骨1つ分後方にシフトすることが判明した。これらの結果から四肢動物種間で保存されているこれらの2つの配列は種を超えて保存されたGdf11のエンハンサーであり、後肢の位置決定に必須であることが明らかとなった。次に、シマヘビにおけるGdf11のエンハンサー候補配列を見つけるために、これまでに解読したシマヘビの全ゲノムにシマヘビの前体節中胚葉の細胞のATAC-seqの結果をマッピングし、オープンクロマチンの領域を明らかにした。Gdf11遺伝子座周辺の10個の領域をPCRで単離し、tk-EGFPベクターの上流に挿入した。ニワトリ胚を用いて前体節中胚葉におけるエンハンサー活性を調べた結果、弱いエンハンサー活性もしくはエンハンサー活性を示さない領域のみであることが判明した。シマヘビのゲノムにも領域Bと領域Fは存在することからシマヘビは他には種特異的なGdf11のエンハンサー配列は存在しない可能性が示唆された。

今後の研究の推進方策

2022年度の研究結果から、Gdf11のエンハンサー候補領域をCRISPER/Cas9システムを用いて標的遺伝子破壊したマウスにおけるGdf11の発現量をRT-qPCRを用いて解析した。その結果、領域Bと領域Fを破壊するとGdf11の発現量が減少したことから両方ともそれぞれGdf11のエンハンサーであることが明らかとなった。また骨染色を用いて後肢の位置を調べた結果、ホモのノックアウトマウスにおいては後肢の位置が脊椎骨1つ分後方にシフトすることが判明した。これらの結果は、それぞれのエンハンサー配列のシングルノックアウトマウスの結果である。そこで次年度は領域Bと領域Fの二重欠損マウスを作成し、両方のエンハンサーが存在したい時のGdf11の発現量の減少をRT-qPCRを用いて明らかにしていく必要がある。エンハンサーは複数存在する場合1つのエンハンサーをノックアウトしただけでは表現型が見られないことが多い。そのため領域Bと領域Fの二重欠損マウスではよりシビアな表現型が得られることが期待される。またシマヘビ以外の種では、種特異的なエンハンサーの候補配列が見つかった。次年度はこれらの領域をマウスにノックインしたエンハンサーノックインマウスを作成し、後肢の位置が変化するのか同様に解析して行きたい。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)

  • [学会発表] 四肢動物における後肢の位置の多様性を生み出した分子基盤2023

    • 著者名/発表者名
      鈴木孝幸
    • 学会等名
      日本解剖学会
    • 招待講演
  • [学会発表] ニワトリ-ウズラの属間F1雑種胚を用いたトランスクリプトーム解析による種間の遺伝子発現量の違いの検出2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木孝幸
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会年会
    • 招待講演
  • [学会発表] 四肢動物における後肢の位置の多様性を生み出した分子基盤2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木孝幸
    • 学会等名
      日本動物学会
    • 招待講演
  • [備考] 大阪公立大学理学研究科生物学専攻 発生生物学研究室

    • URL

      https://www.omu.ac.jp/sci/biol-dbiol/

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公開日: 2023-12-25  

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