研究課題/領域番号 |
22H02694
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岸田 治 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (00545626)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 移動 / 個体成長 / 生活史 / 多型 / 降海 |
研究実績の概要 |
4月,7月,10月に幌内川の上流域5.3kmの調査区間において採捕調査を行った.また持ち運び式のPITタグアンテナを用いて調査区間内を毎月1度以上踏査し,個体位置の把握をした.魚の広域移動は河川6箇所に設置した個体式のアンテナで常時モニタリングした.以上の調査を中心として,以下の研究に取り組んだ. 研究① 生息場所変更の誘発要因と条件依存性の探索 生息場所の変更を誘発するシナリオを探索した結果,サクラマスにおいては非繁殖期にはほとんど生息場所の変更が生じないが,繁殖期を挟んで生息場所の変更が生じることが明らかとなった.特に繁殖場所の上流域から遠くに生息していた成熟個体ほど,繁殖期を境とした生息場所変更が生じやすい傾向があったことから,成熟個体が繁殖期中に河川を広く移動した結果,新しい生息場所を利用するようになったと考えられた. 研究② 河川降海時のサイズ依存的な行動様式の解明 サクラマスの降海型には,降河タイミングにサイズ依存的なパターンがあり,小さな個体ほど遅く海に行くことで,降海時のサイズを大きくすることが分かっている.今年度の調査の結果,小さな個体ほど降河移動を開始する前の生息場所に長居することで大型化していることが明らかとなり,小さな個体は元の生息場所での滞在期間を調整したことがわかった.しかし,過去のデータも分析したところ昨年度は,小さな個体ほど降河移動を開始した後の河川下流域(回遊コリドー)で長居することで大型化していたことがわかった.以上の結果を合わせて考えると,「小さな個体は複雑な河川景観のなかで移動のタイミングを状況に応じて変えることで,河川での成長を最大化している可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査システムの不具合もなく,研究室に所属する大学院生と北大苫小牧研究林のスタッフの活躍もあり,順調に進んだ.
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今後の研究の推進方策 |
今後も自然状態の個体の行動を追跡調査することで研究に取り組むが,個体の移動や環境の一部改変を通した操作実験も加えることでさらに研究に深みを増したいと考えている.さらに,研究を進める上で新しい発見もあったので,それを深掘りして探索研究を更によいものとしたい.例えば,今年度は特にサクラマスの成熟個体の繁殖期の移動に着目して研究を進めたが,その時期には繁殖に参加しない未成熟個体や他種の移動も生じていることが示唆された.このデータを分析し,移動を引き起こす個体間相互作用の実態に迫っていきたい.
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