研究課題
神経シナプスでは、シナプス前部と後部が協調して作動して、神経細胞間の情報伝達が行われる。近年の超解像観察により、シナプス前部の神経伝達物質放出に関わるタンパク質とシナプス後部の受容体集積に関わるタンパク質は、シナプス膜局所でナノドメインを形成しており、これらがナノスケールで対面整列することが精緻なシナプス伝達に重要であることが分かってきた(シナプス-ナノカラム仮説)。一方、PSD-95やSynGAP等のシナプスタンパク質は、試験管内で液-液相分離(相分離)を介して膜によらない区画(液滴)を形成するが、シナプス-ナノ構築における相分離の生理的意義は明らかではない。本研究では、(1) “種々のシナプス構成タンパク質が相分離を駆動し、ナノカラムを構築維持する”という仮説を検証し、(2)構成タンパク質の疾患変異がナノカラム形成と相分離に与える影響を明らかにする。さらに、(3)神経細胞-グリア細胞間の相互作用における相分離の関与と機能を明らかにすることを目的とする。2022年度は、様々なシナプス構成タンパク質を組換えタンパク質として精製し、試験管内で液-液相分離を検証することが可能な実験系(沈降実験やイメージング実験等)を構築した。また、神経細胞軸索とオリゴデンドロサイト間に見られる特殊な膜区画(ノード、パラノードや傍パラノード)の形成に関わるタンパク質群を精製した。今後、これら精製タンパク質を様々な組み合わせで混合し、相分離が駆動されるかを検証していく。
2: おおむね順調に進展している
液-液相分離を特異的に検証することができる実験系(沈降実験やイメージング実験等)を構築し、様々なシナプスタンパク質精製標品を得た。
1. 液-液相分離を駆動するシナプスタンパク質の組み合わせを検討する。2. 神経細胞軸索とオリゴデンドロサイト間の膜区画(ノード、パラノードや傍パラノード)の形成機構を解明すると共に、液-液相分離の関与を検討していく。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (2件)
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