研究課題
近年の超解像観察により、シナプス前部の神経伝達物質放出に関わるタンパク質とシナプス後部の受容体集積に関わるタンパク質は、シナプス膜局所でナノドメインを形成しており、これらがナノスケールで対面整列することが精緻なシナプス伝達に重要であることが分かってきた(シナプス-ナノカラム仮説)。また、神経細胞-グリア細胞間においても、特殊なナノスケールの膜ドメインが報告され始めた。本研究では、(1)シナプス-ナノドメインやナノカラムの形成に液-液相分離が関与しているか、(2)構成タンパク質の疾患変異がナノカラム形成と相分離に与える影響を明らかにする。さらに、(3)神経細胞-グリア細胞間の相互作用における相分離の関与と機能を明らかにすることを目的とした。2023年度は、前年度に引き続き、液-液相分離を駆動するシナプスタンパク質の解析を進めると共に、神経細胞軸索とオリゴデンドロサイト間に見られる特殊な膜区画(ノード、パラノードや傍パラノード)の形成に関わるタンパク質に着目して研究を進めた。具体的には、私共は知的発達症に関連する分泌タンパク質LGI3がオリゴデンドロサイトから分泌され、その受容体ADAM23と共に傍パラノードに濃縮して局在することを見出した。また、LGI3-ADAM23に相互作用するタンパク質として電位依存性カリウムチャネルKv1を同定し、これら3つのタンパク質複合体が約90 nm径のナノドメインを形成し、共局在していることを見出した。さらに、LGI3ノックアウトマウスやADAM23ノックアウト神経細胞において、これらナノドメインを含む傍パラノードが著しく縮小することを見出した(Miyazaki et al. Cell Rep 2024)。今後はこれらナノドメイン形成に、液-液相分離が関与しているかも含めて検証していく。
2: おおむね順調に進展している
シナプス-ナノドメイン構築に関わるタンパク質群を中心に、in vitroでの液-液相分離の性状解析を進めた。また、opto-droplet法を導入し、液-液相分離を光照射により誘導可能な実験系も構築した。さらに、オリゴデンドロサイトと神経軸索間にも特殊なナノドメインが存在することを見出した。
1. 引き続き液-液相分離を駆動するシナプスタンパク質の組み合わせを検討し、ナノドメイン構築との因果関係を検討する。2. 神経細胞軸索とオリゴデンドロサイト間の膜区画(ノード、パラノードや傍パラノード)の形成における液-液相分離の関与を検討していく。
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