研究課題
シナプス可塑性において、細胞内シグナル分子であるリン酸化キナーゼは極めて重要であると考えられている。特に、大脳皮質や海馬の興奮性神経細胞において、グルタミン酸入力によるスパインの体積変化とAMPA受容体のリクルートにキナーゼは必須である。キナーゼとしては、細胞内シグナル分子であるCaMKIIがシナプス可塑性に必須であると考えられている。実際に、大脳皮質や海馬の興奮性神経細胞において、グルタミン酸入力によるスパインの体積変化とAMPA受容体のリクルートにCaMKIIは必須である。研究代表者はこれまでに、シナプスにおいて光照射依存的にシナプスの可塑的変化を惹起することが可能な光応答性リン酸化キナーゼの開発を進めて来た。具体的には、植物の光受容タンパク質キナーゼであるPhototropin1のLOV2ドメインを用いて、遺伝子コードされた光応答性CaMKII開発を行った。この分子を、遺伝子銃を用いて海馬スライスCA1領域の神経細胞に応用することで、光照射によりスパイン体積の増大を惹起することに成功した。また、現在までに、アデノ随伴ウイルスの作製プロトコールを確立し、遺伝子導入した個体マウスにおいても光照射によりスパインの体積変化を惹起することに成功し論文として発表した(Ueda et al. Cell Reports 2022)。
2: おおむね順調に進展している
個体動物に遺伝子コード型光応答性分子を発現させるには、アデノ随伴ウイルスを用いることが最も簡便である。個体マウスで光照射によりスパインの体積変化が惹起出来るかどうかを確認するため、光応答性分子をコードするアデノ随伴ウイルスの精製と脳スライスや個体動物への適用が可能になっている。具体的には、精製したウイルスを用いて、マウス大脳皮質の神経細胞にプローブを発現させ、光応答性キナーゼを光活性化することで、スパインの体積変化が惹起出来ることを個体マウスのレベルで確認することができている。また、光応答性分子のシナプスへの局在化についても様々なコンストラクトを試しており、、研究は極めて順調に進んでいる。
研究代表者は今年度までに、シナプスにおいて光照射依存的にシナプスの可塑的変化を惹起することが可能な光応答性CaMKIIの開発を進めて来た。また、この分子を用いて、海馬スライス神経細胞において光照射によりスパイン体積の増大を惹起することに成功している。また、今年度までに個体マウスで光照射によりスパインの体積変化を惹起出来ることを確認することができた。次年度も引き続き、光応答性CaMKIIに各種様々な遺伝子改変を行い、可塑的変化が起こったスパイン特異的に光応答性CaMKIIを局在化させることを試みる。
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