研究課題/領域番号 |
22H02738
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
市川 聡 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (60333621)
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研究分担者 |
勝山 彬 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (20824709)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 天然物 / ライブラリー / 抗菌剤 |
研究実績の概要 |
天然物は人智を超えた活性・構造を有する重要な創薬シード分子である。中分子天然物を創薬リードへと昇華させるためには、包括的な天然物誘導体から構成されるライブラリーの構築は極めて大きな意義を持つ。しかしその一方で、天然物そのものが医薬品となるケースはわずか数%にすぎないのも事実であり、「原石」を創薬リードとするためには、生物活性の増強・標的に対する選択性の向上・代謝安定性の付与・体内動態の向上・毒性の低減などの様々な性質を改善する必要がある。そのためには、天然物が有する化学構造の改変が必須であり、多彩な天然物誘導体群(ライブラリー)を用いた構造活性相関の検討が必要である。本申請研究では、本法を更に創薬リード創出に資する強力な中分子天然物創薬プラットホームとすべく、さらに①標的とする天然物とアクセサリーの拡充と、②様々な生物学的等価体に変換と構造最適化を行う事で、創薬リード創出を図る。薬剤耐性菌感染症を対象疾患として設定し、最終的にはこれらに対する創薬リードの創製を目指す。 今年度は、抗菌活性を示すカプラマイシン、ムレイドマイシン、リファンピシン等の天然物のライブラリー合成を行った。その結果、標的酵素に対する阻害活性の向上ばかりではなく、ESKAPE各菌種に対する抗菌スペクトルの異なる多彩な誘導体を見出す事が出来た。更に本研究手法の有効性を示すべく、抗がん活性を示すタキソール、ビンブラスチン、エポチロン等のチューブリン作用薬についても本ライブラリー合成法を適用した。その結果、天然物と同等のチューブリン作用活性を保持する誘導体を複数同定する事が出来た。今後は、これらの誘導体を、抗体薬物複合体などのモダリティに変換し、高活性・高機能分子とする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、抗菌薬として現在使用されている環状ペプチド系天然物である、ラモプラニン・アクチノマイシンD・チオストレプトンなどの既存天然物薬や、投げ縄型ペプチド系天然物テイクソバクチン・コリスチンを対象として、化合物ライブラリーの作成を行ってきた。その結果、2024年度末までの目標であった3000化合物の化合物ライブラリーの作成が2023年度内に終了した。これらの包括的なライブラリーの各種抗菌活性を評価する事で、抗菌スペクトルが拡大したものや、元の天然物のコアフラグメントの活性を凌駕する誘導体を見出す事も出来た。さらに、ヒット化合物のヒドラゾン部を、カルボキサミド等の化学的・生物学的に安定な等価体に変換した化合物群を合成し、代謝安定性の検証を行いながら構造の最適化を行っている。 以上の事から、研究は順調に進行していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、アクセサリーフラグメントの拡充を行うことで、更なる化合物ライブラリーの拡張を行う。2024年度までに、さらに天然物群全体で1000個の中分子天然物誘導体ライブラリーを供給する予定である。 これまでと同様にして、薬剤耐性の獲得が問題となるESKAPEに対する抗菌活性評価、ヒト肝細胞(HepG2)に対する細胞毒性の検証を行ったうえで、ヒット化合物については、代謝安定化能を付与するような生物学的等価体への変換と構造最適化を行う事で、in vivo薬理試験にて良好な抗菌活性を示す真の創薬リードを見出す予定である。
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