研究課題/領域番号 |
22H02741
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
根本 哲宏 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (80361450)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 脱芳香化 / 安定結合活性化 / 遷移金属触媒 / 天然物合成 |
研究実績の概要 |
初年度は以下のような研究成果を得た。 脱芳香化反応に関しての検討としては、ホウ素触媒を用いる新規脱芳香化反応の開発に成功した。計算化学によるメカニズム解析を行なった結果、アミド結合にて架橋した基質を用いる我々の反応系においては、従来のホウ素触媒を用いるフェノールやインドールの脱芳香化とは異なる、アミドカルボニル酸素の隣接基関与に基づく炭素ーホウ素間の相互作用を介したカルベン発生機構が関与していることが明らかとなった。 ドラグマシジンE合成としては、イリジウム触媒を用いる不斉水素化、パラジウム触媒を用いる骨格構築、銀ナイトレンを用いるC-Hアミノ化を用いることで、当初の合成計画に沿った連続不斉中心を有する天然物骨格の構築に成功した。しかしながら、最終天然物まで合成するためには工程数が長く、十分な化合物量を供給するには困難が予想されるため、新たな合成ルートの探索を同時に行い、新たな検討を開始している。 安定結合を直接的に変換する手法として、可視光吸収型配位子ー遷移金属錯体を用いるラジカル発生法を開発した。現在も検討を継続しており、次年度には論文として報告する。また、安定なヨウ化ベンゼン誘導体への可視光照射を利用するラジカル関与によるシュードインドキシル合成にも成功しており、引き続き検討を継続する。また、ロジウム触媒を用いるアミドC-N結合への挿入反応を利用する合成手法開発に関しても、アルカロイド天然物合成への応用に展開した。 生物活性ポリフェノールであるレスベラトロールの合成研究としては、ビチシノールGの全合成に成功した。本合成においては、計算化学的な反応性の予測をもとに、合成ルートの設定を行なった。また、ロクスブルギオールAの全合成にも成功しており次年度に論文として報告する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度において、ホウ素触媒を用いる脱芳香化反応に関しては論文を報告し、想定していた結果を得るに至った。銀触媒を用いる脱芳香化反応に関しても、既に検討が進んでおり、インドール7位を反応点とする脱芳香化、芳香環の脱芳香化を経由する[6+2]環化反応に関しては、次年度中には論文を報告できる段階にある。ドラグマシジンEの合成に関しても、当初想定していた合成戦略が機能することは実証できた。しかしながら、合成ルートの短縮を目指し、他のルートの検討も開始している。ラジカル反応を活用する分子変換に関しても、萌芽的なデータを得るに至っており、安定結合を直接変換する合成法の開発は順調に進展している。また、通常は安定で反応しないアミドC-N結合への挿入反応を利用した天然物合成にも成功した。レスベラトロールオリゴマーの合成に関しても、2つのレスベラトロールダイマー天然物の全合成に成功しており、次年度に向けレスベラトロールトリマー合成に向けた検討を既に開始している。上記の進展状況を根拠とすれば、初年度の研究としては順調に進んでいると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
2年度目となる次年度は、銀触媒を用いる脱芳香化反応に関して検討中の課題:インドール7位を反応点とする脱芳香化反応、芳香環の脱芳香化を経由する[6+2]環化反応の開発に関してさらに検討を進める。また、ロジウム触媒を用いるインドール骨格の直接的官能基化反応の開発も進める。 ラジカル反応を利用する安定分子構造の直接変換反応としては、可視光励起によるラジカル発生を基盤としたシュードインドキシル合成とその応用に関して、単純オレフィン類のアルコキシ/ヒドロキシアルキル化反応の開発に関して、論文としてまとめる予定である。 天然物合成としては、レスベラトロールトリマー類の合成に向けた基盤的研究を集中的に検討する。ドラグマシジンEの合成に関しては、現行の合成ルートでは最終物まで到達するには長すぎる欠点を踏まえ、その他の合成ルートの検討も含め検討を継続する。また、ラジカル反応を活用したドラグマシジンGの簡便合成法の検討も新たに開始する。 いずれの研究においても、計算化学的なメカニズム解析や反応性の予測を活用し、理論と実験の両面から検討にあたる。
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