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2023 年度 実績報告書

次世代ペプチド創薬の基盤となる分子技術の開発

研究課題

研究課題/領域番号 22H02748
配分区分補助金
研究機関京都薬科大学

研究代表者

小林 祐輔  京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (90509275)

研究分担者 浜田 翔平  京都薬科大学, 薬学部, 助教 (00833170)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードペプチド / グリコシル化 / ハロゲン結合 / カルコゲン結合 / ニクトゲン結合
研究実績の概要

中分子ペプチド創薬が近年注目されており、抗腫瘍・感染症などの幅広い領域での応用が期待されている。しかし、これまでに得られたヒット化合物の多くは体内動態に改善の余地があり、臨床試験に適応可能な候補化合物をより高い確率で得るためには、ペプチドの代謝安定性や細胞内移行性を解決する新たな技術・方法論の開発が必要である。技術開発が立ち遅れている最大の理由は、ペプチド鎖を連結・修飾するための水系溶媒中で実施可能な反応が限られていることに起因する。そこで、申請者はハロゲン結合などのσホール(非共有結合性)相互作用などの水系溶媒中でも有効な相互作用を活用した新規反応、および反応剤を開発し、これまでに報告のないペプチド連結法・ペプチド修飾法を目指した。 2023年度は前年に引き続き、下記の項目1)~4)について検討を行った。具体的には、1)種々のオルト位置換基を有するヨードニウムイリドの立体構造と反応性の評価、2)種々の置換基を有するベンゾチアゾールの立体構造と反応性の評価、3)アミドの水中N-グリコシル化反応の開発、4)チアゾール環連結型ペプチドカップリング反応の開発と応用である。
項目1)では、分子内ハロゲン結合を利用した新規超原子価ヨウ素反応剤の開発に成功し、X線結晶構造解析により構造を明らかにすることができた。項目2)ではいくつかの2-スルホニル化ベンゾチアゾール反応剤を合成し、システイン残基との水系溶媒中においても反応することが明らかになった。項目3)については、アミドのN-グリコシル化反応について、これまでに報告している触媒よりも高活性な触媒を見いだすことができたが、水中での反応は今だ達成できていない。項目4)では、チアゾール骨格合成に必要なチオアミドの合成について、新規反応剤の開発に成功し種々のニトリル類の加硫化水素分解によってチオアミドを収率よく合成することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1)オルト位置換基を有するヨードニウムイリドの立体構造と反応性の評価:分子内ハロゲン結合を利用した新規超原子価ヨウ素反応剤の開発に成功し、X線結晶構造解析により構造を明らかにすることができた。また、合成した反応剤を用いて、芳香環や不飽和結合に炭素原子や窒素原子を導入することに成功している。
2)種々の置換基を有するベンゾチアゾールの立体構造と反応性の評価:いくつかの2-スルホニル化ベンゾチアゾール反応剤を合成した。いずれも、システイン残基との水系溶媒中においても反応することが明らかになった。システイン残基導入後に塩基で処理することで、デヒドロアミノ酸へと誘導することができた。
3)アミドの水中N-グリコシル化反応の開発:アミドのN-グリコシル化反応について、これまでに報告している触媒よりも高活性な触媒を見いだすことができた。糖供与体についてはチオ糖の二量化が観測されたため、ラジカル前駆体であるスルホニル糖の合成を行っている。また、アミド等価体として、カルコゲン結合やニクトゲン結合を利用したラジカル前駆体の合成に成功している。今後、水中での反応へと展開する。
4)チアゾール環連結型ペプチドカップリング反応の開発:チアゾール骨格合成に必要なチオアミドの合成について、新規反応剤の開発に成功し種々のニトリル類の加硫化水素分解によってチオアミドを収率よく合成することができた。
全体として満遍なく進捗が見られているだけでなく、当初計画していなかった反応剤の合成を達成することができている。

今後の研究の推進方策

1)オルト位置換基を有するヨードニウムイリドの立体構造と反応性の評価:基質一般性を確認した後に論文化を目指す。
2)種々の置換基を有するベンゾチアゾールの立体構造と反応性の評価:システイン残基から無置換のデヒドロアミノ酸への合成を達成できたので、今年度は三置換のデヒドロアミノ酸の合成を目指す。具体的には、スルフィド中間体と超原子価ヨウ素反応剤によるプメラー型の反応について検討を行う。
3)アミドの水中N-グリコシル化反応の開発:糖供与体であるチオ糖の二量化が観測されたため、塩基や添加剤による二量化の抑制を検討する。アミドとのカップリングが困難である場合は、近年ラジカル前駆体として注目されているスルホニル糖を合成し、アミド前駆体との反応を検討する。また、アミド等価体としては、カルコゲン結合やニクトゲン結合を利用したラジカル前駆体の合成を引き続き行い、水中での反応へと展開する。
4)チアゾール環連結型ペプチドカップリング反応の開発:本反応についても、基質の一般性を確認した後に論文化を目指す。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2023 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件) 学会発表 (10件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 1,3‐Dipolar Cycloaddition of 3‐Chromonyl‐Substituted Glycine Imino Esters with Arylidenes and <i>in?situ</i> Diastereodivergent <i>via</i> Retrocycloaddition2023

    • 著者名/発表者名
      Radwan Mohammed F.、Elboray Elghareeb E.、Dardeer Hemat M.、Kobayashi Yusuke、Furuta Takumi、Hamada Shohei、Dohi Toshifumi、Aly Moustafa F.
    • 雑誌名

      Chemistry An Asian Journal

      巻: 18 ページ: e202300215

    • DOI

      10.1002/asia.202300215

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Development of Novel Hypervalent Iodine Compounds Bearing Intramolecular Halogen Bonding2023

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi Yusuke、Takemoto Yoshiji
    • 雑誌名

      Journal of Synthetic Organic Chemistry, Japan

      巻: 81 ページ: 483~491

    • DOI

      10.5059/yukigoseikyokaishi.81.483

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Diverse Site-Selective Transformation of Benzylic and Allylic Silyl Ethers via Organocatalytic Oxidation2023

    • 著者名/発表者名
      Hamada Shohei、Sakamoto Kaori、Miyazaki Eri、Elboray Elghareeb E.、Kobayashi Yusuke、Furuta Takumi
    • 雑誌名

      ACS Catalysis

      巻: 13 ページ: 8031~8037

    • DOI

      10.1021/acscatal.3c01153

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Dual Chalcogen‐Bonding Interactions for the Conformational Control of Urea**2023

    • 著者名/発表者名
      Inoue Takumi、Ota Moe、Amijima Yui、Takahashi Haru、Hamada Shohei、Nakamura Seikou、Kobayashi Yusuke、Sasamori Takahiro、Furuta Takumi
    • 雑誌名

      Chemistry - A European Journal

      巻: 29 ページ: e202320139

    • DOI

      10.1002/chem.202302139

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Oxidative Deprotection of Benzyl Protecting Groups for Alcohols by an Electronically Tuned Nitroxyl-Radical Catalyst2023

    • 著者名/発表者名
      Hamada Shohei、Sumida Maiko、Yamazaki Rikako、Kobayashi Yusuke、Furuta Takumi
    • 雑誌名

      The Journal of Organic Chemistry

      巻: 88 ページ: 12464~12473

    • DOI

      10.1021/acs.joc.3c01217

    • 査読あり
  • [学会発表] カルコゲン結合で立体制御したビピリジル部を持つ軸性不斉非対称ウレアの合成2023

    • 著者名/発表者名
      高橋 暖、中村 梨那、太田 萌絵、井上 拓美、村井 琢哉、笹森 貴裕、浜田 翔平、小林 祐輔、古田 巧
    • 学会等名
      第21回次世代を担う有機化学シンポジウム
  • [学会発表] ベンジル・アリル位のシリルエーテル選択的酸化法の開発2023

    • 著者名/発表者名
      浜田翔平、阪本圭織、宮崎瑛梨、Elghareeb E. Elboray、小林 祐輔、古田 巧
    • 学会等名
      日本プロセス化学会2023サマーシンポジウム
  • [学会発表] カルコゲン元素を持つチオウレア誘導体の合成と立体構造2023

    • 著者名/発表者名
      森田 名美、井上 拓美、太田 萌絵、浜田 翔平、古田 巧、小林 祐輔、古田 巧
    • 学会等名
      第43回有機合成若手セミナー
  • [学会発表] N-アシルイミノヨージナン反応剤による不活性アルケンのアミノ化反応の開発2023

    • 著者名/発表者名
      小林 祐輔、上田 敬、浜田 翔平、古田 巧
    • 学会等名
      第26回ヨウ素学会シンポジウム
  • [学会発表] alpha-位に芳香環を有するニトロキシルラジカルの合成と触媒活性評価2023

    • 著者名/発表者名
      大霜 彩乃、浜田 翔平、松田 彩花、古賀 貴裕、阪本 圭織、小林 祐輔、古田 巧
    • 学会等名
      第73回日本薬学会関西支部総会・大会
  • [学会発表] カルコゲン結合を持つロジウム二核錯体の合成と第二級アルコールの位置選択的アルキル化の検討2023

    • 著者名/発表者名
      中村 優希、三上 紋加、松山 千夏、井上 拓美、浜田 翔平、小林 祐輔、古田 巧
    • 学会等名
      第73回日本薬学会関西支部総会・大会
  • [学会発表] 不活性アルケンの光アジリジン化反応の開発2023

    • 著者名/発表者名
      上田 敬、浜田 翔平、小林 祐輔、古田 巧
    • 学会等名
      第73回日本薬学会関西支部総会・大会
  • [学会発表] カルコゲン結合により配座制御されたウレア誘導体の立体構造と物性2023

    • 著者名/発表者名
      網島 唯、井上 拓美、太田 萌絵、森田 名美、浜田 翔平、小林 祐輔、古田 巧
    • 学会等名
      第73回日本薬学会関西支部総会・大会
  • [学会発表] ニトロキシルラジカルを触媒としたシリルエーテルの酸化の反応機構解析2023

    • 著者名/発表者名
      阪本圭織、浜田翔平、宮崎瑛梨、小林 祐輔、古田 巧
    • 学会等名
      第49回反応と合成の進歩シンポジウム
  • [学会発表] ニトロキシル型酸化触媒によるベンジル・アリル位のシリルエーテル選択的酸化法の開発2023

    • 著者名/発表者名
      浜田翔平、阪本圭織、宮崎瑛梨、Elghareeb E. Elboray、小林 祐輔、古田 巧
    • 学会等名
      第16回有機触媒シンポジウム
  • [備考] 京都薬科大学薬化学分野ホームページ

    • URL

      https://labo.kyoto-phu.ac.jp/yakka/

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公開日: 2024-12-25  

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