研究課題/領域番号 |
22H02750
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
岩崎 憲治 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 教授 (20342751)
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研究分担者 |
竹中 聡 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, 整形外科部長 (00588379)
堀越 直樹 東京大学, 定量生命科学研究所, 准教授 (60732170)
吉田 将人 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (80511906)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 滑膜肉腫 / 創薬 / 構造生物化学 |
研究実績の概要 |
現在最も受け入れられ、コンセンサスの得られているKadochモデルの検証に予定通り取り組んだ。SS18-SSXのC末端領域と酸性パッチとの相互作用解析を行った。特に患者の2/3を占めるSS18-SSX1だけでなく残り1/3の患者から検出されるSS18-SSX2も考慮して実験を行った。本結果から、ヌクレオソームのH2A K119ユビキチン化がなくても、弱いながら相互作用することが判明した。実際GraFixという手法によって、複合体のクライオ電子顕微鏡単粒子解析に成功した。SSX1、SSX2両者のC末端領域と野生型クロマチンリモデリング複合体SWI/SNFの正常成分SMARCB1の酸性パッチ結合領域であるC末端25アミノ酸残基の3つのヌクレオソームに対する親和性の大きさの比較をプルダウンアッセイ法で行った。ただし、SSX1とSSX2については、SS18-SSXに含まれる78残基とC末端の酸性パッチ結合領域34残基の2種類について本実験を行った。この結果からSMARCB1がSS18-SSXによってSWI/SNF複合体に結合できなくなることが証明されたが、その詳細なメカニズムは原子モデルを用いた検討が必要である。また、Nielsenらが提唱しているモデルを検証するため、そして阻害剤の検討をするためHDAC2の発現および精製に取り組んでいたが、バキュロウイルス発現系の構築に失敗が続き、試したコンスラクトについて、ことごとく発現さえ認められないという結果であった。そこでExpi293Fを用いた発現系を試し、発現が認められたが、Expi293FでHDAC2を発現した場合に大きな問題があることが見つかった。幸いにもExpi293Fの実験を通じてバキュロウイルス発現系におけるこれまでの問題点が明らかになり、新たにバキュロウイルスを用いた昆虫細胞発現系のデザインを考案するに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の想定に反し、HDAC2の 発現精製に 際して、バキュロウイルスを用いた昆虫細胞発現系構築に失敗し、続いて行ったExpi293F細胞培養発現系での取組のおいて、試薬 にHDAC2の強力な阻害剤が含まれていることが判明したから。
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今後の研究の推進方策 |
SSX1RD-ヌクレオソームとSSX2RD-ヌクレオソーム複合体のクライオ電子顕微鏡単粒子解析結果から原子モデルを構築し、詳細な結合様式を調べる。また、その結果を既報告のSWI/SNF-ヌクレオソーム複合体の構造におけるSMRACB1とヌクレオソーム酸性パッチとの相互作用様式と比較する。これによって、2022年度の研究結果得られたヌクレオソーム酸性パッチに対する結合親和性の大きさの違いの説明を試みる。一方で、分子レベルの、SSX1とH2A-H2Bヘテロダイマーの結合阻害アッセイ系を改良し、完成させる。同時にSSX2とH2A-H2Bヘテロダイマーの結合阻害アッセイ系を作製する。これによって、結合親和性のある程度の定量化をこころみる。また、患者細胞を用いて、吉田将人博士の作製した化合物の細胞毒性を検証する。HDAC2のバキュロウイルス発現系の構築、精製に成功したら、HDAC2阻害剤のHDAC2阻害アッセイを行う。
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