研究課題/領域番号 |
22H02762
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中嶋 悠一朗 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 講師 (90782152)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 脱分化 / 幹細胞 / 栄養 / 腸管 / ショウジョウバエ |
研究実績の概要 |
腸管上皮は、幹細胞を起点とした細胞の分化とターンオーバーの協調によって恒常性が維持されるが、損傷応答や腫瘍形成においては分化細胞が幹細胞へと脱分化する細胞可塑性を示す。一方、腸管上皮の脱分化が生理的な状況下で誘導されるのかは明らかでなく、脱分化の人為的な制御は未到達の課題である。申請者は、ショウジョウバエ腸管上皮をモデルとして、栄養環境の変動が分泌性細胞から幹細胞への脱分化を誘導する、新規の細胞可塑性を見出している。そこで本研究では、遺伝学的解析とシングルセル解析によって、栄養依存的な脱分化を制御する分子メカニズムを明らかにし、脱分化の生理的意義を組織や個体レベルで解明することを目的としている。 初年度は、脱分化に必要な栄養素を同定するための実験系を導入した。また、シングルセル解析用のサンプルを準備してscRNA-seqを行い、RNA velocity解析から脱分化軌道を見出した。さらに、脱分化した細胞集団で遺伝子操作を行うための実験系の構築を進めて、実際に脱分化集団での遺伝子操作を実現した。一連の解析から、脱分化しやすい細胞集団の存在とその特徴に関して分子および細胞レベルの特性を同定することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、遺伝学的解析とシングルセル解析によって、腸管上皮における栄養依存的な脱分化を制御する分子メカニズムを明らかにし、脱分化の生理的意義を組織や個体レベルで解明することを目指している。本年度は、脱分化に必要な栄養素を同定するために特定の栄養素を含まない合成エサ(holidic medium)を与えて脱分化する上での条件検討を進めた。また、脱分化中および脱分化終了時の腸管サンプルを用いたscRNA-seqを行い、RNA velocity解析からAstC陽性分泌性細胞から腸幹細胞への脱分化軌道を同定している。さらに、Gal4/UASとQF/QUAS系を組み合わせることで、脱分化した細胞群でのみ細胞死誘導、あるいは、細胞分裂を阻害する実験系を導入することに成功した。一連の成果をまとめて投稿論文として投稿した。
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今後の研究の推進方策 |
腸管上皮における分泌性細胞の脱分化は、栄養環境の変動で誘導されることから、脱分化に関与する栄養素とシグナル経路の同定を進める予定である。また、脱分化の生理的意義を明らかにするために、脱分化細胞集団の操作を行い、栄養摂取に伴う適応成長への関与を調べる。さらに、in silicoでも同様に脱分化の頻度を操作するシミュレーションを確立することで、脱分化の適応成長への寄与を検証していく予定である。
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