研究課題/領域番号 |
22H02788
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
松永 民秀 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 教授 (40209581)
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研究分担者 |
岩尾 岳洋 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 准教授 (50581740)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ヒトIPS細胞 / 腸管上皮細胞 / 腸管オルガノイド |
研究実績の概要 |
ヒトiPS細胞の腸管上皮細胞への分化誘導法について、低分子化合物や培養法の影響について詳細に検討を行った。その結果、既存の方法に対して新たな培地及び培養法を組み合わせることで、最終的に得られる腸管上皮細胞の腸管上皮細胞マーカー、薬物代謝酵素、薬物トランスポーターのmRNA発現が顕著に増加した。一方、腸管バリア機能のマーカーとして用いられる経上皮電気抵抗(TEER)値については、既存の方法で分化した細胞と比較し顕著に低いことが明らかとなった。そこで、Lucifer Yellowを用いた透過試験を行い、バリア機能の検証したところ、新規方法で分化誘導した細胞においては、既存の方法よりもよりもむしろ透過性が低いことが明らかとなった。 ヒトiPS細胞由来腸管オルガノイドを単細胞化した後に、セルカルチャーインサートの膜上に播種した。低分子化合物と培養法により、陰窩-絨毛様構造のでき方並びにその安定性に顕著な差が認められた。陰窩-絨毛様構造を有する腸管細胞におけるTEER値は、約200Ω・cm^2であり、ヒトiPS細胞より分化誘導したヒトiPS細胞由来腸管上皮細胞の約800Ω・cm^2と比較して顕著に低かった。しかし、Lucifer Yellowを用いた透過試験においては約0.2×10^-6(cm/s)と顕著に低いことから、腸管バリアは十分形成されていることが確認された。 閉鎖系の三層デバイスについて、ミクロリングポンプを用いた培地の灌流実験をおこない、液漏れ等が無いこと、三層の接着強度が十分であることを確認した。そこで、培地にて30倍したマトリゲルでデバイスの細胞培養面をコーティングし、三層デバイスの最上層に小腸上皮細胞としてCaco-2細胞を播種した。また、三層目には肝細胞としてHepG2細胞を播種した。その結果、両細胞とも細胞の接着が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトiPS細胞から腸管上皮細胞への分化誘導に関しては、低分子化合物の見直し並びに培養法の検討により、より生体の小腸に近い機能を有する細胞の作製に成功した。また、ヒトiPS細胞由来腸管オルガノイドの二次元培養法も確立し、セルカルチャーインサート上に陰窩-絨毛様構造の作製も可能となった。菌との培養につては、乳酸菌との培養に関して予備的な検討を行い、菌数の検討や培地の検討を行った。2023年度は予定通り菌との共培養について本格的に検討を行う。また、閉鎖系三層デバイスの作製に関しては、試作品を用いて細胞の播種の検討を行った。細胞播種や灌流の検討においては、細胞の観察等も含め二層デバイスが有用であることから、二層デバイスの試作品を作製し、細胞の接着について確認を行った。しかし、培地を灌流した際に細胞が剥離したことから、2023年度は播種や灌流条件についてより詳細に検討を行い必要がある。 以上より、現在のところ概ね順調に研究が進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の検討においてヒトiPS細胞由来腸管上皮細胞の分化誘導法については、最適化がほぼ終了したことから、2023年度はその機能解析を行う。また、ヒトiPS細胞由来腸管オルガノイドの二次元培養については、予定通り菌との共培養の検討を行う予定である。具体的には、同じ乳酸菌でも菌株において性質が異なることから、複数の菌株とヒトiPS細胞由来腸管細胞と共培養可能な培地の更なる検討を行う。その後、乳酸菌と共培養を行い、腸管マーカーのmRNA発現、バリア機能、ムチン量等、腸管機能に及ぼす乳酸菌の影響等について検討を行う。 閉鎖系デバイスについては、二層デバイスに関して細胞播種並びに灌流条件の検討をCaco-2細胞とHepG2細胞を用いて行う。その後、可能であれば、ヒトiPS細胞由来腸管上皮細胞あるいは腸管オルガノイド由来の細胞を播種して検討を行う。
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