研究課題
UBL3関連分子の空間的挙動の解明を目指す本研究課題において、1) UBL3関連分子の同定、2) UBL3関連分子の細胞内イメージング、3) Ubl3ノックアウト(Ubl3-KO)マウス臓器における脂質イメージング、について成果を得た。1) UBL3関連分子の同定 細胞内での分子相互作用を発光にて測定するSplit-Gluc法を構築し、UBL3と神経変性疾患関連分子であるα-Synが相互作用を示すことを、Split-Gluc法および免疫沈降法により明らかにした(論文投稿中)。また、その相互作用がグルタチオンペルオキシダーゼの一種であるMGST3のノックダウンにより抑制されることを明らかにした(論文投稿中)。MGST3がUBL3に結合する分子であることは、我々の研究グループにより既報である(Ageta et al. Nat Commun, 2018)。2) UBL3関連分子の細胞内イメージング 強発現させたα-Synは、HEK293細胞内では細胞質に一様に分布しているように観察されるが、UBL3を共発現させると、α-Synが粒子状に分布することが明らかになった。その粒子様構造は、エクソソームマーカーであるCD63陽性を示しており、α-SynがUBL3によって細胞内のエクソソームに運搬されることが示唆された。3) Ubl3-KOマウスのエクソソームと各種臓器で量的変化を示す脂質種のイメージング Ubl3-KOマウスにおいて、野生型マウスよりもエクソソームで減少し、腎臓で増加する2種の脂質分子種について、それぞれUbl3-KOマウス腎組織の髄質と皮質で相対的分布強度が増加していることの再現性を質量顕微鏡(DESI-IMS)を用いて確認した。さらに、Ubl3-KOマウス腎臓にて、糸球体メサンギウム細胞数が増加していること、尿中アルブミン/クレアチニン比が上昇していることも明らかになった。
1: 当初の計画以上に進展している
計画の細胞実験に関して、発光酵素タンパク質Glucを2つに分割させたSplit-Gluc(N末領域、C末領域)にUBL3と対象分子α-Synを融合させ、UBL3と対象分子α-Synとの相互作用を評価する系を構築した。この系は、細胞を溶解させる必要がなく培養液を直接計測することが可能のため、高いスループット性を有する。その特性を活かし、20種類を超える既承認薬を検証し、UBL3とα-Synの相互作用に影響を及ぼす薬剤を同定した。また、Split-Glucの系から、UBL3とα-Synの相互作用を制御する因子MGST3を同定しており、これらの成果から当初の計画以上であると評価できる。さらに、UBL3との共発現により、α-Synがエクソソームに運搬されることを示唆する知見を得ていることも当初の計画以上であると評価できる。個体解析では、計画のDESI測定による再現性(UBL3関連脂質分子種の腎組織における分布解析)を確認した。さらに、HE染色像から糸球体メサンギウム細胞数を計測し、Ubl3-KOマウスで増加していることを発見した。また、Ubl3-KOマウスにおける尿中アルブミン/クレアチニン比の上昇から、腎機能障害を示唆する知見を得た。これらの進展から、当初の計画以上であると評価できる。
細胞実験に関して、UBL3および関連分子の空間的挙動解析を推進する。具体的には、UBL3関連分子として今回明らかにしたα-SynとMGST3に着目し、高輝度蛍光タンパク質であるAchillesやSRAIにUBL3や関連分子を融合させた発現系の構築を進める。これらの蛍光ツールにより、UBL3や関連分子の細胞内挙動を詳細に解析していく。今回、MGST3のノックダウンによってUBL3とα-Synとの相互作用が抑制されることが明らかになったため、MGST3強発現によるUBL3機能制御についても解析を進める。UBL3共発現により、α-Synが細胞内エクソソームに運搬されることを示唆する知見から、細胞培養液から回収したエクソソームに対するα-Synの量的検証を行う。個体実験に関して、腎組織の微細構造解析を進める。具体的には、Ubl3-KOマウスにおける糸球体メサンギウム細胞数の増加および腎機能(尿中アルブミン/クレアチニン比)の障害を示唆する知見から、濾過フィルターの機能を持つ糸球体基底膜の肥厚を含む糸球体微細構造について電子顕微鏡解析を行う。
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Neurobiol Dis.
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http://www.hama-med.ac.jp/mt/setou/ja/