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2023 年度 実績報告書

ドパミンシグナル制御による神経精神疾患治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 22H02812
配分区分補助金
研究機関久留米大学

研究代表者

西 昭徳  久留米大学, 医学部, 教授 (50228144)

研究分担者 河原 幸江  久留米大学, 医学部, 准教授 (10279135)
大西 克典  久留米大学, 医学部, 助教 (10626865)
黒岩 真帆美  久留米大学, 医学部, 助教 (20585690)
首藤 隆秀  久留米大学, 医学部, 准教授 (70412541)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードドパミン / p11 / コリン作動性 / 神経精神疾患 / 薬物療法
研究実績の概要

統合失調症を初めとする神経精神疾患において、ドパミン神経系を標的とした薬物療法が臨床応用されている。現状の薬物療法を改善するためには、ドパミン神経系を制御する神経回路および神経分子機構の解明が必要である。そこで、ドパミン神経系を制御するp11シグナル系に着目して、側坐核、前頭前皮質、海馬神経回路におけるドパミン神経伝達制御機構を解明するための研究を実施している。令和4年度に引き続き、(1) 側坐核コリン作動性介在神経 (CIN) p11シグナル系によるドパミンシグナル制御機構、(2) 前頭前皮質に投射するコリン作動性神経によるドパミンシグナル制御機構、(3) 青斑核ノルアドレナリン神経による海馬歯状回ドパミンシグナル調節機構に焦点を絞った解析を行なった。アセチルコリン(ACh)やノルアドレナリンによるドパミンシグナル制御機構の解析のために、Fiber photometryを用いて神経伝達物質の濃度変化を高い時間分解能で解析できるシステムを構築し、神経伝達物質の変動とマウスの行動との関連性の解析を進めている。マウス行動に関してはDeepLabCutによるディープニューラルネットワークを用いた行動の定量解析を行なうことにより、より詳細な分析が可能となっている。前頭前皮質におけるドパミンシグナル制御や海馬-前頭前皮質ドパミン調節回路において、前脳基底部コリン作動精神系に発現するp11が重要な役割を果たしていることを明らかにした。前頭前皮質のAChは認知機能調節においても重要であるが、ChAT-Cre p11 cKOマウスは新規対象物に対する認知が低下していることは、認知機能においても前脳基底部コリン作動性神系に発現するp11の重要性を示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1. 側坐核コリン作動性介在神経 (CIN) p11シグナル系によるドパミンシグナル制御機構の解明:(1) 神経伝達物質の濃度とダイナミクスに適したバイオセンサーの選定を行い、Fiber photometryによるACh、ドパミン測定系を構築している。行動の解析では、DeepLabCutによるディープニューラルネットワーク解析を行うことにより、目視では気づきにくいマウスの行動変化も定量的に捉えることが可能となっている。これらのデータを元に、AChおよびドパミンの変動と行動変化の関連性について解析を行っている。 (2) 側坐核CINに発現するp11、HCN2および5-HT1B受容体がマウスのうつ様行動に及ぼす影響の評価:CINに発現するp11とHCN2はうつ様行動を制御するが、CINに発現する5-HT1B受容体の関与を示唆する結果は得られていない。
2. 前頭前皮質に投射するコリン作動性神経によるドパミンシグナル制御機構の解明: ChAT-Cre p11 cKOマウスでは、新規刺激に対する前頭前皮質ドパミン応答や海馬-前頭前皮質ドパミン調節回路の機能が低下している。ChAT-Cre p11 cKOマウスの前脳基底部コリン作動神経にp11を過剰発現させるレスキュー実験により、新規刺激に対するドパミン応答および海馬-前頭前皮質ドパミン調節回路の機能が回復した。この結果は、前頭前皮質のドパミンシグナル調節におけるコリン作動性神経p11の重要性を示唆している。また、認知機能においても前脳基底部コリン作動性神系に発現するp11の重要性を明らかにしている。
3. 青斑核ノルアドレナリン神経による海馬歯状回ドパミンシグナル調節機構の解明:Fiber photometryによるノルアドレナリン測定システムを用いて、ストレスに対する青斑核ノルアドレナリン神経の応答を解析している。

今後の研究の推進方策

1. 側坐核コリン作動性介在神経 (CIN) p11シグナル系によるドパミンシグナル制御機構の解明:側坐核コカイン注入や自然報酬におけるACh・ドパミン応答をマウスの行動変化と同時記録することにより、行動におけるACh・ドパミン応答の生理的意義を検討する。AChとドパミンの時間的変動性と相関性の解析において複雑な関連性が予測されるため、AIアルゴリズムの開発にも注力する。また、ACh・ドパミン応答と行動変化の相関性をより具体的に解析するために、オペラント条件付けシステムを用いた行動解析を実施する。
2. 前頭前皮質に投射するコリン作動性神経によるドパミンシグナル制御機能の解明: ChAT-Cre p11 cKOマウスの前脳基底部において、コリン作動性神経のp11レスキューにより、前頭前皮質のドパミン応答が改善する結果を得た。この結果を得てさらに、背部と腹側部海馬入力の機能的役割の違いについても検討する。また、前脳基底部コリン作動性神経のp11が認知機能調節において重要であることを示唆する結果を得ており、p11によるACh放出と認知機能との関連性を解析する。さらに、前脳基底部コリン作動性神経の活動性を制御する神経回路にもアプローチする。
3. 青斑核ノルアドレナリン神経による海馬歯状回ドパミンシグナル調節機序の解明:化学遺伝学的手法を用いて青斑核ノルアドレナリン神経の活性を調節し、うつ様行動への影響を明らかにする。ドパミン・ノルアドレナリンバランスのストレス・うつ病での変動を明らかにするため、ストレス負荷によりうつ様行動を示すマウスモデルを用いたFiber photometry解析を行う。ドパミン・ノルアドレナリンバランスの変動と行動変化との関連性は複雑であり、AIアルゴリズムの開発にも注力する。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2023 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (2件)

  • [国際共同研究] ロックフェラー大学/アラバマ大学(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      ロックフェラー大学/アラバマ大学
  • [国際共同研究] 大邱慶北科学技術院 DGIST(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      大邱慶北科学技術院 DGIST
  • [雑誌論文] Inhibition of STAT-mediated cytokine responses to chemically-induced colitis prevents inflammation-associated neurobehavioral impairments2023

    • 著者名/発表者名
      Sin Ryusuke、Sotogaku Naoki、Ohnishi Yoshinori N.、Shuto Takahide、Kuroiwa Mahomi、Kawahara Yukie、Sugiyama Keita、Murakami Yuki、Kanai Masaaki、Funakoshi Hiroshi、Chakraborti Ayanabha、Bibb James A、Nishi Akinori
    • 雑誌名

      Brain, Behavior, and Immunity

      巻: 114 ページ: 173~186

    • DOI

      10.1016/j.bbi.2023.08.019

  • [学会発表] 線条体の領域特異的なD1受容体シグナル:L-ドパ誘発性ジスキネジアにおける役割2023

    • 著者名/発表者名
      西 昭徳、杦山 慶太、黒岩 真帆美
    • 学会等名
      第53回日本神経精神薬理学会年会
  • [学会発表] 全身性炎症に併発するマウスうつ様行動を抑制する抗炎症薬2023

    • 著者名/発表者名
      西 昭徳、沈 龍佑、首藤 隆秀、大西 克典、黒岩 真帆美、杦山 慶太、河原 幸江、外角 直樹
    • 学会等名
      第76回日本薬理学会西南部会
  • [学会発表] Is the attractiveness of male mice from female mice inherited?2023

    • 著者名/発表者名
      Yoshinori N. OHNISHI, Yukie KAWAHARA, Yoko H. OHNISHI, Akinori NISHI
    • 学会等名
      The 50th Annual Meeting of Society for Neuroscience (SfN)
    • 国際学会
  • [学会発表] 神経精神疾患の治療基盤となるドパミン研究:多様なドパミン神経系の理解を目指して2023

    • 著者名/発表者名
      西 昭徳
    • 学会等名
      日本医師会ブロック別生涯教育講座
    • 招待講演
  • [学会発表] 線条体におけるドパミンD1受容体シグナルの領域特異的な制御: L-ドパ誘発性ジスキネジアとの役割2023

    • 著者名/発表者名
      杦山 慶太、黒岩 真帆美、首藤 隆秀、西 昭徳
    • 学会等名
      第50回日本脳科学会
  • [学会発表] Cocaine's Modulatory Effects on Male Social Ranking and Attractiveness2023

    • 著者名/発表者名
      Yoshinori N. OHNISHI, Yukie KAWAHARA, Yoko H. OHNISHI, Akinori NISHI
    • 学会等名
      第97回日本薬理学会年会
  • [図書] 薬の基本とはたらきがわかる薬理学2023

    • 著者名/発表者名
      柳田 俊彦
    • 総ページ数
      349
    • 出版者
      羊土社
    • ISBN
      978-4-7581-2169-9
  • [備考] 久留米大学医学部薬理学講座ホームぺージ

    • URL

      http://www.med.kurume-u.ac.jp/med/pharm/index.html

  • [備考] 久留米大学研究者紹介

    • URL

      http://research.kurume-u.ac.jp/data.php?scode=54075632864873

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公開日: 2024-12-25  

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