研究課題
AEL/AMKLはモデルマウスが報告されておらず、治療法の開発が進行しない原因の1つと考えられる。この点を打開するため、AEL/AMKLの新規PDXマウスモデルを複数確立する。薬効試験は、予備実験により効果が確認されているruxolitinibを用いた単剤治療を行うとともに、臨床で使用されている化学療法剤またはアザシチジンやベネトクラクスとの併用療法も試みる。ゲノム解析などにより治療効果を予想するバイオマーカーを同定し、治療による薬剤耐性腫瘍が認められた場合は薬剤耐性のメカニズムを明らかし、さらなる治療の改善を目指す。本年度は昨年に引き続き主に以下の研究を実施した。AEL/AMKLに罹患した患者が受診されたら検体を患者の同意のもと収集し、次世代シーケンシングにより得られたデータを包括的に解析した。解析は、申請者らが所属している京都大学大学院医学研究科腫瘍生物学講座の解析パイプラインを利用し、塩基変異、染色体異常、構造異常など包括的にかつ詳細に解析した。また、申請者らのこれまでの解析によって明らかになったAEL特異的変異遺伝子群(EPOR、JAK2など)については、特別に開発したAELパイプラインによっても解析を行った。収集した検体を用いて、免疫不全マウス(NOD/Scid IL2rgnullマウス)に移植したPDXモデルの作成をおこなっている。本研究では、2年間で、AELとAMKLをそれぞれ10検体を目標に移植し、それぞれ5モデルの新規PDXモデル樹立を目指しているが、AELについては10モデル、AMKLについては1モデルの新規PDXモデル樹立に成功している。
2: おおむね順調に進展している
収集した検体を用いて、免疫不全マウス(NOD/Scid IL2rgnullマウス)に移植したPDXモデルを作成している。成体への移植に加えて、新生児顔面静脈移植やEXLマウス(ヒトサイトカインIL3/GMCSF発現マウス)など生着の確率を上げるための試みも行う予定であったが、マウスの購入費が上昇しており、昨年度も効率の良い新生児顔面静脈移植を中心にモデル作成を行った(新生児が多数生まれるため1匹当たりの単価が安い)。
昨年に引き続き、検体の収集とがんの遺伝子変異解析、および、PDXモデルの作成を継続する。本研究では、2年間で、AELとAMKLをそれぞれ10検体を目標に移植し、それぞれ5モデルの新規PDXモデル樹立を目指す。本年度はさらに以下の実験も開始する。新たに樹立したPDXモデルを用いて薬効試験を行う(in vivo実験)。試験前にはPDX細胞をさらにシーケンスし患者検体で認めた変異が再現されていることを確認する。薬効試験は、予備実験により効果が確認されているruxolitinibを用いた単剤治療および併用治療により行う。また、AEL/AMKLの標準治療である化学療法剤やTP53 変異陽性骨髄異形成症候群を対象としたアザシチジン、アポトーシスを誘導するBCL-2阻害剤ベネトクラクスとの併用療法も試みる。さらに、AELのPDXモデルを用いた薬剤試験の結果を踏まえ、治療効果を予想するバイオマーカーをRNA-seq解析により明らかにする。新規マーカーについてはそのシグナル経路を標的とした薬剤があれば同様に薬効試験を行う。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Blood
巻: 141 ページ: 534~549
10.1182/blood.2022018221
Cell Chemical Biology
巻: 30 ページ: 618~631.e12
10.1016/j.chembiol.2023.05.007