研究課題
生体を構成するすべての細胞は、多様な力学的環境にさらされており、外界からの‘機械的な刺激’を感受することで、自らの状態を変化させる。今や、この力覚機構は、生体の恒常性維持にかかわる基幹的制御として認識されており、生命現象を理解するための重要な研究課題になっている。本研究では、最新の顕微鏡技術を発展・改良することで、未だ研究が立ち遅れている力覚のin vivoイメージング研究に取り組む。本年度は、生きたマウスの脛骨に対して様々な力学的負荷(免荷ならびに静荷重)を加えつつ、生体骨組織をライブ観察する生体イメージング法の確立に取り組んだ。動物を生きた状態でライブ観察するためには、観察対象を不動化するための固定具が必要となる。マイクロCT画像などのマウス脛骨に関する形態情報をもとに、熱溶解積層方式および光造形方式の3Dプリンタを用いて固定具の試作品を作製し検討を行った結果、7ニュートンまでの静荷重負荷下における骨組織内の定点観察法を確立した。さらに、本方法を、第二次高調波発生による骨組織の主成分であるコラーゲン組織と、全身の細胞で赤色蛍光タンパク質を発現するマウスを用いることで骨組織内のオステオサイトを同時に観察する方法を組み合わせることで、脛骨の長軸方向に様々な静荷重負荷を加えつつ、同一視野のオステオサイトとコラーゲン構造をライブ観察する実験方法を確立した。本年度の研究によって、従来研究では不可能とされていた生きたマウスの脛骨内の力覚のin vivoイメージング法の確立に成功を収めた。
2: おおむね順調に進展している
本年度では、当初の計画通りに力覚のin vivoイメージング法を確立することができたことに加えて、本方法を用いることで様々な大きさの静荷重負荷を加えた骨組織内の観察に成功を収めており、おおむね順調に進展している。
今後は、力学的刺激に伴って変動するメカノメディエイターのひとつとして知られるATPに着目し、ATPに対するFRET型バイオセンサーGOATeamをオステオサイトで発現するマウスを樹立することで、様々な静荷重負荷に対するオステオサイトの力覚応答をATP変動を指標とすることで明らかにすることに取り組む。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)
microPublication Biology
巻: 15 ページ: -
10.17912/micropub.biology.000650
Scientific Reports
巻: 12 ページ: -
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Autophagy
10.1080/15548627.2021.2017587