研究課題/領域番号 |
22H02831
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
森下 和広 宮崎大学, フロンティア科学総合研究センター, 特別教授 (80260321)
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研究分担者 |
中畑 新吾 鹿児島大学, 医歯学域ヒトレトロウイルス学系, 教授 (80437938)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ピルビン酸キナーゼ(PKM) / がん代謝異常 / Walburg効果 / NDRG2 |
研究実績の概要 |
DRG2はがん抑制遺伝子として、成人T細胞白血病並びに多くの固形がんにおいてその発現抑制からがん白血病の発症に深く関わっている。がん の代謝異常としてのWalburg効果として、 ピルビン酸キナーゼ(PK)の活性が深く関わっておりそのサブタイプ(M1/M2)の発現の相違ががんではM2 とされてきた。しかしながらATLや肺がんの一部ではPKM1が主として発現していることを我々、並びに宮城県立がんセンターにおいて発見した。そこでNDRG2が欠損した癌のタイプでは、他のがん(PKM2優位発言)とは異なるWalburg効果の分子機構が存在することが示唆される。我々はATLをモデルにして、このPKM1発現優位によるWalburg効果への分子機構を解明することを研究の目標とする。研究内容としてはNDRG2欠損マウスを用い、それから樹立された胎児線維芽細胞(MEF)樹立し、さらには共同研究先よりPKM1 Tg、 PKM2 Tgマウスより樹立されたMEF細胞において、NDRG2遺伝子をknockdownした細胞株を樹立する。これらの細胞におけるPKM1リン酸化異常やPKM1高発現によるリン酸化PKM1の発現レベルと機能を調べ、またFX analyzer及び、metablome解析を加え、其の代謝異常とNDRG2発現 PKM発現との関連性を検討する。これまで言われてきたPKM2優位の発現が、がんのWalburg効果への影響が出現するという考えが一般的な説であったが、我々のATLにおけるPKM1の高発現ならびに、NDRG2欠損による高リン酸化による代謝異常が、新しいWalburg効果の分子機構の解明につながることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、NDRG2欠損マウスを用いて胎児線維芽細胞(MEF)を採取し、NDRG2+/+ NDRG2+/- NDRG2-/-の三系統の細胞株を樹立した。さらに、共同研究先である、宮城県立がんセンターより、Pyruvate kinase(PK) M1及びM2のTgマウスより樹立されたMEF細胞を入手し、NDRG2 shRNAを導入し PKM1 Tg/NDRG2low細胞株の樹立を進めた。一年目は共同研究先である鹿児島大学ウイルス研究所での実施者(エジプトからの研究者)が、コロナ等の問題で2022年度の入国が遅れ、2022年度内での樹立が遅れてしまい、2023年度にずれ込んでしまった。しかしながら、その後順調に細胞株が樹立され、これらの細胞株を使って、代謝産物の検討、metablome解析が終了し、またFX analyzerを用いた解析も2023年度までに終了した。2024年度はこれらの結果を詳しく解析し、解析データーを元にさらなる解析を加えていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に樹立されたPKM1及びPKM2 NDRG2KD MEF細胞株を使って、metablome解析が終了し、またFX analyzerを用いた解析も2023年度までに終了した。これまでのFX analyzerの結果では、PK M1高発現株はNdrg2をKDするとミトコンドリアでの最大呼吸活性が上昇し、OCRへの代謝シフトを誘導した。さらにPKM2高発現株ではNdrg2をKDするミトコンドリアでの基礎呼吸能、最大呼吸活性が上昇する結果となった。NDRG2の抑制によりミトコンドリアでのエネルギー産生が亢進しており、この亢進機構について、metablome解析の結果を踏まえ、NDRG2の有するがん細胞での機能についてさらなる解析を加えていく予定である。また患者検体を用いたメタボロームの解析も並行して行っており、其の結果も含めてNDRG2が有する代謝への機能的関与を検討する予定である。
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