これまでネクローシスは物理化学的な要因や栄養の枯渇などによって特定の分子には依存せずに引き起こされると考えられてきたが、近年ネクローシスを引き起こす細胞内分子機構が発見され、制御性ネクローシスという概念が確立されてきた。ネクロプトーシスはTNF(tumor necrosis factor)などのサイトカインや細菌・ウイルス成分などによって引き起こされる制御性ネクローシスである。各種受容体からのシグナルはRIPK3(receptor interacting protein kinase 3)という細胞質内セリン・スレオニンキナーゼに集約される。TNF受容体の下流では、RIPK3はRIPK1と結合し、アミロイド様高次構造体を形成する。この高次構造体の中でRIPK3は自己リン酸化によって活性化される。その後、活性化したRIPK3が下流分子であるMLKL(mixed lineage kinase domain like pseudokinase)をリン酸化してシグナルを伝達する。リン酸化されたMLKLはオリゴマーを形成し、細胞膜などの生体膜にポアを形成してネクロプトーシスを実行する。一方でRIPK3にはネクロプトーシス非依存的な機能も備わっており、RIPK3がネクロプトーシス依存的・非依存的な機能の両方を用いて炎症反応を制御していることが明らかになっている。そのためRIPK3がどのようにして様々な機能を発揮しているかを理解することが重要である。本研究ではネクロソームの時空間ダイナミクスとその実体を明らかにすることでネクロプトーシスの分子機構を解明することを目的とし、本年度はRIPK3の細胞内での動態を明らかにした。またネクロソームに集積する新規分子を同定し、RIPK3との機能的関係性を明らかにした。
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