研究課題
近年、組織の恒常性維持や病態形成における間葉系細胞と免疫細胞の相互作用の意義に注目が集まっている。滑膜の炎症に伴って骨や軟骨の破壊が進行する自己免疫疾患である関節リウマチの病態解明においても免疫-間葉系-骨の3者相互作用の理解が重要であると考えられる。われわれはこれまでに滑膜線維芽細胞が破骨細胞誘導因子RANKL を発現する主要な細胞として骨破壊を誘導すること、組織破壊型の病的滑膜線維芽細胞の形成機構を明らかにしてきた。JAK阻害剤は関節リウマチの治療薬として広く使用されているが感染症をはじめとする副作用も存在するため、標的細胞の同定や作用機序の解明は病態理解や治療法の開発において重要であると考えられる。JAK阻害剤は様々な免疫細胞や滑膜線維芽細胞の活性化を抑制することが知られているが、生体内で破骨細胞と骨芽細胞のどちらに作用して骨保護作用を発揮するか不明な点が多かった。そこで今年度では主に、動物モデルを用いて関節リウマチの3つの骨破壊のタイプである、関節破壊、傍関節性骨粗鬆症、全身性骨粗鬆症において、JAK阻害剤の破骨細胞や骨芽細胞への効果を検討した。その結果、関節破壊では主に破骨細胞による骨吸収を抑制することで、傍関節性骨粗鬆症と全身性骨粗鬆症においては破骨細胞の抑制に加えて骨芽細胞による骨形成を促進することで骨保護作用を発揮することが明らかとなった。また、試験管内の検討により、多くのJAK阻害剤はIFN-gamma産生T細胞による破骨細胞分化抑制を解除したが、特定のJAK阻害剤は破骨細胞抑制が維持されたままであることが判明した。これらの結果からJAK阻害剤の効果は、微小環境や標的とするJAKやシグナル経路の特異性に依存することが示唆され、臨床所見に応じてJAK阻害剤を使い分ける必要性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
骨・関節の恒常性維持と破綻の機構の解明において解析が順調に進み一定の成果を得た。
シングルセル解析などのデータを活用しつつ引き続き骨・関節の恒常性維持と破綻の機構の解明を行う。
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