研究課題
近年、リンパ管発生に重要なパラクライン分子が発見され、リンパ管の重要性が再認識されている。我々はこれまでに、独創的なリンパ管新生マウスモデルを構築し、リンパ管新生に関与する分子群の解析を行ってきた。その結果、リンパ管周囲の線維芽細胞が分泌するAREGがリンパ管の直径を規定するとともに、出芽にも関与することが示唆された。このことから、AREGはリンパ管の管腔径を規定するパラクライン分子として、線維芽細胞が分泌するものであり、AREGがリンパ管拡張作用を有することを見出した(Yoshida et. al., PNAS, 2021)。本研究では、リンパ管の管腔径を規定しているAREGが、リンパ管の「出芽」にも関与することが示唆されることから、リンパ管新生においてリンパ管内皮細胞の「出芽」を誘導するパラクライン分子であるかを検証し、さらに「出芽」に関与する細胞内シグナルの全容を解明するものである。リンパ管内皮細胞にAREGを作用させリンパ管内皮細胞の「出芽」に関与する可能性を明らかにするため、AREG-EGFRシグナルの重要性をin vivoで検証する目的で研究を推進した。AREG-EGFRシグナルをin vivoで検証する場合、コンディショナルノックアウト(CKO)マウスの作製が必須である。我々は、Areg-Floxマウスの作製に着手した。その結果、Areg-FloxマウスのF0を経て、N1をゲノムシーケンスで目的の変異が挿入されているか検討し、1個体(雌)を得た。WT雄と交配し、都合6回出産したが、食殺やネグレクトのため2回の出産のN2仔マウスしか得ることができず、すべての個体が目的の変異を持っていないことをゲノムシーケンスで確認した。ただいま過排卵とIVFによってN2作成に取り掛かっている。また、EGFR-Floxの作成も進めており、近くF0を得る予定である。In vitro系からAREG添加によって上昇してくる分子群の解析にも着手しているところである。
2: おおむね順調に進展している
In vivo の検討では、懸案のAreg-Floxマウスと新たにEGFR-Floxの作製を行っている。特にEGFR-Floxについては早期にF0を得る見込みであり、早々に解析に移行したいと考えている。また、in vitroの系を立ち上げ、AREG-EGFRシグナルによって発現が変動する遺伝子群の解析から、リンパ管内皮細胞に発現していることが知られていないGene Xを発見した。現在、Gene Xの機能解析を行っているところであり、研究はおおむね順調に推移しているものと考えている。
In vivo の検討では、Areg-Floxマウスと線維芽細胞特異的Creマウスを交配し、線維芽細胞から分泌されるAREGを消失させることによって、リンパ管の出芽を阻害できるのか検討を行う計画である。また、EGFR-Floxとリンパ管特異的Creマウスを交配し、リンパ管から分泌されるAREGを消失させることによって、リンパ管の出芽を阻害できるのか検討を行う計画である。 In vitroの検討では、Gene Xの機能解析を行い、リンパ管出芽に関与するか検証する計画である。
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Biochem Biophys Res Commun
巻: 658 ページ: 27-35
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