研究課題/領域番号 |
22H02859
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
石野 智子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (40402680)
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研究分担者 |
橘 真由美 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 助教 (00301325)
新澤 直明 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (10583015)
長岡 ひかる 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, プロジェクト講師 (10757222)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | マラリア原虫 / 近位依存性ビオチン化酵素 / スポロゾイト / 寄生胞膜 |
研究実績の概要 |
マラリア原虫は蚊によって媒介され、ヒト体内では最初に肝細胞に寄生し数万倍に増殖した後に、赤血球感染サイクルを始める。ヒトへの感染成立ステップであるスポロゾイトの肝細胞寄生の分子基盤の解明のために、host-parasite 相互作用の観点から「スポロゾイトが肝細胞特異的に感染する機構」を明らかにすることを目的とする。感染に重要な原虫分泌型タンパク質とin situで近接する肝細胞側の分子を、改良型 BioID を用いて網羅的に探索する。得られた宿主分子のスポロゾイト感染における役割を解析し、包括的な感染成立メカニズムの解明へと繋げようとする。 本年度は、昨年度のUIS4-AirID, LISP1-AirID原虫作出に加えて、RON3, RAMAにAirIDタグを融合させた遺伝子改変原虫の作出を試みた。しかしながら、ネイティブの遺伝子座をタグ融合型に置換することができず、それぞれC末側、N末のシグナルペプチドの直下にAirIDタグを融合することが機能を損なうことが推測された。そこで、別の遺伝子座に融合タンパク質発現コンストラクトを挿入した遺伝子改変原虫を作出した。しかしながら、RON3-AirIDの局在がオリジナルのRON3と僅かに異なることが、タグを認識する抗体を用いた蛍光抗体法により判明したため、ビオチン化酵素挿入の場所を変えた遺伝子改変原虫を現在作成中である。 肝細胞感染後に寄生胞膜上に発現が認められる、UIS4-AirID, LISP1-AirIDを発現させた組換え原虫については、スポロゾイトを感染蚊の唾液腺から回収し、肝癌由来培養細胞HepG2に添加し、ビオチンとともに48時間培養後に肝細胞を回収し、質量分析のためのサンプル調整を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ビオチン化酵素融合タンパク質発現遺伝子改変原虫を複数作出できた。RON4-AirID発現原虫を用いた近接タンパク質同定を通して、質量分析データの解析法など習得した。複数のビオチン化酵素を比較し、どれが本目的に最適か検証が可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
作出したビオチン化酵素融合タンパク質発現原虫を蚊に感染させて、唾液腺から十分量のスポロゾイトを回収したのち、肝由来培養細胞に添加する。ビオチン存在下で培養を続け、16-48時間後に回収し、細胞懸濁液をトリプシン処理したのち、ビオチン化ペプチドを質量分析により、ヒトのゲノムデータベースを活用して同定する。コントロールとして、スポロゾイトを添加せずに培養した細胞から同様に処理したサンプルを用い、検出数に有意に差のあるペプチドから近接タンパク質の候補を同定する。 既知の情報から相互作用の可能性が高いと判断できるタンパク質をそれぞれ5種類ずつ選択し、抗体を用いてPLA法により、感染肝細胞においてベイトとして用いた原虫タンパク質と近い局在を示すか解析する。相互作用すると判断できた宿主細胞分子は、CRISPR/Cas9システムにより肝細胞からノックダウンし、野生型スポロゾイトを添加し培養し、感染が成立するか、肝細胞内で原虫が発育するのか評価する。以上により、選定した宿主細胞の相互作用分子が、スポロゾイト感染にどのような役割を果たすのか明らかにする。
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